美形の魔族の長台詞
汚れなき乙女。
この広い世界の中でその存在は貴重だ。
彼女たちの口づけはあらゆる魔法を解除し、魔王ですら滅ぼしてしまう。
しかし、その圧倒的な力をある者は欲し、ある者は恐れるあまりその乙女を手折るのだ。
汚れなき者を汚したいという欲求は、汚れた者なら誰だって密かに胸に抱えているだろう。
その感情を目に見える場所に出すこともなく、自分が失ったものを持っていることへの嫉妬のごとく。
ズガガは、あれは汚れそのものと言っても過言ではない。
ユニコーンやドラゴンのように優美な見た目をしていても、所詮その外見で人間を、魔物を釣り、その魂を食らうのだから。
そんなズガガの求める最上の魂は、汚れなき乙女の魂の他ならない。
赤子の魂は淡白すぎて味がないという。
大人の魂はその汚れが耐え難いえぐ味となるという。
だがな、しかし、汚れそのもののズガガにとって汚れなき乙女の魂は、ご馳走であるが故に重いのだ。
いくら旨いと言っても朝の起きがけに厚切りのステーキは食えまい。
ましてあのズガガは、人の生よりも遙かに長い時間封印され、眠っていたのだ。
『ぬっこぬこの会』の会長が噂通りに御仁ならばタマ殿の準備が終わる程度の時間は稼げるはずだ。