名ばかりのボディーガード
魔王へさらわれた王女様を助けに行くはずだったのに、何時の間にかズガガにさらわれた会長様を助けにいくタマ様に同行していたわれらが勇者ことのん。
カクンと馬車が前に傾くとカンカンと外から戸を叩かれました。
顔を出せば目的地に着いたと言われました。
ことのんがタマ様に目をやると、分かっていると言わんばかりにゆったりと優雅にその身を起こしました。
「ようこそ、タマ殿」
先に行っていた美形の魔族が中のものに話を付けておいたらしく、道の両脇には恭しく頭を垂れる人の列。
全てズガガの研究をしている魔族だそうです。
「お待ちしておりました、タマ様。私がズガガ研究の第一人者です。今回タマ様のズガガ化にあたり全力を尽くさせて頂きます」
胡散臭い眼鏡をかけた白衣の魔族が進み出てタマ様の前で膝を付きます。
それに鷹揚にうなづいてみせたタマ様はう゛ーっと喉の奥を鳴らし先を施します。
ではこちらにと腰を低くしたまま移動する白衣の魔族にタマ様はついていきました。
パタンと音を立ててことのんの目の前の扉が閉まりました。
役に立たないとはいえ名目は魔族からタマ様を守るために付いてきたことのんですが、気づけばあっさりと閉め出されてしまいました。