タマ様の決断
甘く囁く魔族の言葉にその場にいた人間は揃いも揃って声を荒げ反発しました。
しかしタマ様はそれを一度ピシャリと尾を打ち鳴らすことで鎮め、魔族へ向かい鷹揚に肯きました。
「タマ様、魔族なんかに従ってはいけません」
必死な領主様の言葉にもタマ様は知らん顔です。
涼しげなエメラルドの双玉は真っ直ぐ魔族を射抜いていました。
その強い視線を受けて美形は満足げに頷きます。
美形はそのまま顎でズガガ部隊にタマ様をお連れする用の馬車もどきを用意するよう指示を出しました。
着々とその支度が進む中でタマ様の説得に失敗した領主から、一つの提案が魔族へ出されました。
魔族にタマ様をすんなり預けるには人間と魔族の争いの歴史は長すぎるので、タマ様のボディーガードとして勇者であることのんを同席させろ、と言うものでした。
寝耳に水で指名されたことのんは慌てて無理だと手を振りましたが、しょうがない、妥協しようと魔族の美形が言ったので誰もことのんの言い分を聞いてはくれませんでした。
両肩をぽんと同時に叩いた剣士さんと魔術師さんは頑張れと空いた手の親指をあげました。
どうぞこちらへとタマ様と一緒に案内された馬車がことのんの目には牢屋にも見えました。