戒められた扉の先
王女様を魔王から救い出す旅にでた勇者ことのん達。
お金に余裕のないことのんは迷い猫の捜索依頼を受けました。
猫を探してたどり着いた教会の地下迷路。
その最奥の部屋の扉がゆっくりと開きました。
薄暗い扉の中に三人は慎重に足を踏み入れます。
暗闇の中でモゾモゾと動く影が見えましたが、どうやら他の部屋のようにいきなりモンスターは襲ってこない様子でした。
魔術師さんが明かりを掲げると部屋の様子がはっきりと見えました。
こくり、と、ことのんはのどを鳴らしました。
剣士さんも魔術師さんも動けませんでした。
その部屋にあったのは上の教会にあったものとは似ても似つかない祭壇でした。
太い鎖と杭とで縛り付けられたモンスター達。
塵一つ落ちていない床は黒くなった血で汚れています。
そしてそれらの中央には円と直線で構成された精緻な魔法陣と、檻に入れられた黒猫が安置されていたのです。
その時、突然背後から鎖が激しくなる音が響きました。
剣を、杖を掲げ振り返ったことのん達。
そこに立っていたのは全身黒尽くめだったあの男でした。
「ここまで来てしまっては、帰すわけにはいかないですよ」
じゃらじゃらと踊る鎖の中で男はそうのたまったのです。