空への叫びはこだますら帰らない
ガァッ!
細かく震える声でタマ様が天に吼えます。
鋭い真珠の牙をむき出しにして飛び去ったズガガの方をひたすらに睨み上げていました。
タマ様がもし言葉を持つ生き物であったらなんと叫んでいたのでしょうか。
その場の誰もが、魔族を含む全員が無力でした。
太古に封印された最強最悪のズガガが相手では国一番の剣士も、国一番の魔術師も、魔族最強と言われるズガガ部隊も、その圧倒的な力の前に為す術もなく一蹴されたのです。
「なんで、どうしてこんな事になったんだ!」
誰かが叫びました。
それは誰もが心に持っていた疑問でした。
魔族の住処が近いとはいえ平和だったカラントリアの町。
ズガガの復活はそんな生活を脅かしただけでなく『ぬっこぬこの会』の会長様までさらっていきました。
目の前の危機が一時的にとはいえ飛び去った人々の心に黒々と影を落としたのは怒りでした。
「どうしてズガガの封印が解けたんだ!?」
やり場のない怒りが飛び交う中でチリンと鈴が鳴りました。
水を打ったかのように静まった人の中を鈴を鳴らして歩くのは道化。
道化は真っ直ぐことのんを指さして言いました。
「封印を解いたのは、アイツさ」
タマ様のエメラルドの目が瞬きました。