乙女は一歩足を踏み出す
会長様に手を引かれことのんは逃げました。
道中何度か会長様が事の次第を訪ねましたがことのんは首を横に振るばかりでした。
逃げてきたのは町の中央にある領主様の屋敷。
その広い庭に大勢の人が避難していました。
中央で凛々しく剣を持ち、緋色のマントを身にまとうのが領主様でしょう。
有事の際に真っ先に行動できる領主ほど貴重なものはありませんが、その顔にどうも見覚えがあります。
どうやら猫耳をつけてタマ様の前足に口付けていた彼のようです。
彼はことのんの手を引いている会長様に気づくと恭しく一例をしました。
それは正しく主人に対する臣下の礼です。
その礼にはにかむように微笑み会長様はゆったりと中央に歩み寄ります。
もちろん手を繋いだままのことのんも一緒です。
領主様はお辞儀を一つして会長様に場を譲りました。
一歩前に踏み出す会長様。
他の場所に比べ一段高いその場所に立ち彼女は声を張ります。
「皆さん、落ち着いて話を聞いて下さい。本日未明この町の封印がとけました。伝説のズガガが解き放たれてしまったのです」
告げられた言葉は死刑宣告と同意。
しかしひたりとその場は静まりかえりました。
その場の人々の目に浮かぶのは決意でした。