些細な悪戯とその結果
魔王にさらわれた王女様を救う旅に出たことのん。
男が完全に消えたのを確認するとタガーナイフをベルトへと戻しました。
パーティ、それがなにを示すのかことのんには分かりません。
それでも黒尽くめの男が言った『魔王の婚姻』や美少年の魔族が言った『最高のパーティ』などいやな予感しかしません。
ざわざわする背筋をどうにか宥め唇を堅く引き結びます。
ことのんは自分の隣にある封印に目を向けました。
剣がつきたっただけの岩にも見えます。
きょろきょろと周りを見ると誰もいません。
此処にいるのはことのんだけ。
その事実がことのんの好奇心を後押ししました。
そろりと剣の柄に手をかけます。
岩に片足をかけ、空いた手を腰に添えてポーズをとりました。
もの凄いどや顔です。
そんなことのんの軸足を後ろから道化が蹴り上げました。
世間一般で言う膝かっくんです。
バランスを崩したことのんは当然そのまま倒れました。
ことのんの手には一振りのぼろい剣。
ことのんの顔からサッと血の気が引きました。
地べたに這い蹲ったままことのんが岩を見上げると、ゆっくりと鎌首をもたげたズガガが天に向かい大きく牙をむいていました。
それは恐怖の復活を意味しました。