会いたくなかった再会
カラントリアの町の公園でことのんに話しかけてきた男。
それはあのポポロンの町であった招かれざる客でした。
男の手に捕まれそうになった腕を振り払うと、ことのんは大きく後ろに下がりました。
下卑た笑いを浮かべる男は弾かれ赤くなった手をさすります。
「メイド服の方がお似合いでしたよ?勇者様」
じっとりと頭の先から足の先までを舐めるように見た男にことのんの背筋が泡立ちます。
ことのんは足から一組のタガーナイフをはずし、低く構えました。
すらりと伸びた長い足を前後に延ばし低く構えじっと男を見据えます。
剣士さんに習ったとおりの構えでした。
「残念ながら、勇者様にかまっている余裕はないのです」
クツリクツリと喉をひきつらせるように笑い男はことのんへ背を向けました。
その明らかな挑発にことのんは苛立ちましたがじっと耐えました。
男の腕がわからない以上飛び出すのはおろかです。
「では。王にもお伝えください。パーティは近いと」
男が無造作に腕を一振りすると現れたのは光り輝く魔法陣。
旅に出てから何度か見た転移用の魔法です。
ポポロンの町でも同じようにして逃げたのでしょう。
かき消えたその背中をことのんはじっと睨んでいました。