封印と金歯
一人ぶらぶらとカラントリアの町をことのんはさまよい歩きます。
町の景色は岩で作られているせいかどことなく無機質で冷たく感じます。
その分家や店の先には色とりどりの花が植えられていました。
人口は多く大通りには活気があります。
しかし路地の間から顔をのぞかせる灰色の巨大な城壁が目に入る度にことのんは陰鬱とした気分になりました。
大通りに沿って歩いていくと公園に突き当たりました。
公園の真ん中には一本の錆びた剣がつきたった岩がありました。
どうやらこれがズガガの封印のようです。
すぐ側に立てられた看板にはあの物語も書かれています。
ことのんは恐る恐る近づいてみました。
剣は普通の両刃の剣でしたが歯はこぼれ落ちボロボロです。
岩は大きく大の大人でも抱え込めないでしょう。
ぽかんと口を開けたままことのんは封印をしばらくの間眺めていました。
「お嬢ちゃん、封印に興味があるのかね?」
行商人と思われる男が手ぐすね引いてたずねてきました。
ことのんはコクンと首を縦に振りました。
「そうか、そうか。なら良い話をしてやろう」
男は大きく口を横に引きました。
その隙間から金歯が光ります。
ことのんはとっさに手を横凪に払いました。