封じ込められた恐怖
森の中の怪しいお屋敷にお泊まりしたことのん。
その主人の元に案内されたことのんたちの前で、重々しい音を立てて扉が開きました。
ことのんの目にまず飛び込んできたのは白濁した水をたたえた池でした。
室内に新たに作られたというより池を囲むように部屋を作ったようです。
なかなか無理な設計をしたためでしょう、所々にむき出しの岩壁がのぞき洞窟のようでもありました。
そんな壁には数え切れないような量の魔術が這いずり回っていました。
うっすらと明滅しながらぐるぐると部屋を回る光は、確かに執事さんのいうように何かを閉じこめてあるように見えます。
執事さんがつかつかと池の脇にまで歩み寄り小さく言葉を落としています。
その声は小さすぎてこちらまで聞こえては来ませんでしたが、それによって起こった変化は劇的でした。
白く濁った池。
その中心部が風もなくさざめきました。
口を開けて間抜け面をさらすことのんの腕から、剣士さんと魔術師さんが各の武器を奪い取ります。
二人に突き飛ばされるようにして扉のすぐ前まで下がったことのんにはその全景が見えました。
壁を這っていた魔術が白い池の水面に集まり、そこから出ようとする何かを押しとどめていたのです。