戒められた扉の先は
怪しい扉の前でにらみ合う執事さんと剣士さんと魔術師さん。
ことのんは脇によって扉をしげしげと観察していました。
扉には閂が二つ。
南京錠が四つ。
全面に描かれている魔法陣に、扉の周りから蔦のように絡みつくものが五つ。
これと見比べると教会の地下で見つけた扉はやはり簡素に思えました。
あの時は中に魔物を生け贄とした魔法陣がありました。
今回は何がはいっていると言うのでしょう。
楽しいものかなーと、ことのんは現実から逃避しました。
「では、勇者殿に剣と杖をお預け下さい。人徳者とされる勇者殿ならば信用いたしましょう」
執事さんが絞り出すようにして言った譲歩案。
しかしそこまでいってことのんたちを主人に会わせたい意図が分かりません。
そしてそこまで勇者という肩書きを信用するのか分かりません。
渋る二人の手から道化がひょいっと剣と杖をとりことのんへ押しつけました。
二人の武器がことのんへ渡ったのを確認すると、執事さんは扉の前にたち呪文を唱えます。
ガチャリ、ガチャリと重々しい音が響き糸が解れるように扉を縛る戒めが消えます。
扉が、開きました。
「ご主人様、お客様をお連れいたしました。勇者ことのん、どうぞお入り下さい」