無知は人を大胆にする
王女様を救う旅の途中、森の中の怪しいお屋敷で泊まることになった勇者ことのんたち。
ことのんたちには一人一人にベッドがあてがわれていましたが、剣士さんは扉の脇、魔術師さんは窓の脇にいすを運び、そこで休むようです。
剣や杖を持ったままの二人に対して、どうすればいいのかよくわかっていないことのんは、取りあえず壁にもたれ掛かって寝ることにしました。
すぐ持てる位置にナイフを二つとも置いておきます。
すっかり湯冷めしていましたが壁に背を預け布団をかぶると、ユルユルと昼間の疲れもあったのでしょう、すかさず睡魔が襲ってきました。
たまらず目を閉じると、ことのんはストンと眠りに落ちました。
すかすかとのんきに寝息をたてることのんを見て、剣士さんと魔術師さんはため息をつきました。
二人の背筋を這いずり回っていたのは何とも言い難い怖気でした。
気を抜いてしまえば全身が総毛立つでしょう。
カチカチとみっともなく奥歯が鳴るでしょう。
息もつけないこんな緊張の中、安らかな寝息をたてることができることのんの図太さに、二人はほとほと呆れ果ててしまっていました。
こんなことなら野宿の方がよっぽどマシだった、と、二人は目と目で会話しました。