寂れた屋敷と老執事
王女様を救う旅の途中のことのんたち。
森の中で見つけたお屋敷で一晩の宿を借りようと、ことのんは扉をたたきました。
「どちら様かな?」
扉の脇に取り付けられた小さなのぞき窓から声がします。
ことのんは旅のものだが一晩泊めて欲しいと言いました。
「なるほど。ポポロンの町から……。それは、それは。難儀でございましたでしょう。今お開けいたします。どうぞ、お入りくださいませ」
しゃがれた声がそう言うと、キシミをあげながら観音開きの大きな扉が開きました。
扉をたたくために近くにいたことのんは、鼻を強かに打ち付けてしまいました。
「おや、これは失礼」
中から顔を出したのは青白い肌をした老人でした。
きっちりと執事服を身にまとい、長く伸ばした髪は黒いリボンで縛ってあります。
このお屋敷の使用人でしょうか。
「客間へとご案内いたします。何かございましたら、私にまでお言いつけ下さいませ。この鈴を鳴らしましたら、参りますゆえ」
先導する執事の後ろをぞろぞろとことのんたちはついて行きました。
床には赤い絨毯が敷かれ、天井にはガラスのシャンデリアが吊ってあります。
しかし、どこか寂れた印象が屋敷の中の至る所に染み着いているようでした。