森の中のお屋敷
魔王の城へ行くため、ポポロン町をでて更に東へ向かう勇者ことのん達。
ここから先はしばらく、昼なお暗い森林を通って行かなくてはなりません。
まとわりついてくる藪蚊を魔術師さんが魔法で防ぎ、立ち塞ぐ木を剣士さんが切り落としながらの道のりです。
地面にのた打つ根っこに足を取られないよう注意しつつ、時折方位磁針を確認しながらことのんたちは歩いていきました。
町をでて、もうどのくらい来たでしょうか。
ただでさえ暗い森は日が沈み夜になって、鼻をつままれても分からないほどの暗さです。
そんな深い闇の中から聞こえてくるのは、正体の分からない鳴き声ばかり。
ジリジリと下がってきた気温にことのんは首をすくめました。
魔術師さんが杖の先に小さく灯した明かりが、夜の森をいっそう不気味に照らします。
うっすら青みがかった魔法の光が照らし出す森の奥。
目を凝らすと、どうやら建物があるようです。
野宿しなくてもすみそうなことに、ことのんはほっと胸をなで下ろしました。
ゆっくりと近づいてみれば、それは立派な煉瓦づくりのお屋敷でした。
何部屋か窓から明かりが漏れているので人がいるのでしょう。
ことのんはノッカーに手をかけ、軽くならしました。