乙女の祈り
王女様を救う旅の途中だった勇者ことのんたち。
途中ポポロンの町であった領主様の末娘さんの誘拐事件も一段落付き、なぜかズキズキと痛む後頭部を気にしながらも次の町へと移動する事になりました。
「勇者ことのん!」
ずるずると剣士さんと魔術師さんに引きずられるように町から出ようとしたことのんへ声をかけたのは、領主様の末娘さんでした。
末娘さんはコンテストの時のメイド服ではなく、ふわりとした可愛いドレスを翻し真っ赤に上気した頬でことのんを見上げます。
ことのんの身長は高いのです。
「勇者ことのんへ、御武運がありますように。私は魔王城から遠いこの地からですが、ささやかながらお祈りしております」
花がほころぶようににっこりと笑う末娘さんに、ことのんは頷きます。
ことのんは末娘さんのふわふわの頭をちょっと撫でて、町の外へ向かいました。
ひょろりと長いことのんの背を見送る末娘さんは、その場で静かに両手を胸の前で組みました。
勇者ことのんの旅路に幸多かれと。
世界はいまだ、魔王やズガガの恐怖に震えているけども彼女のような希望があれば、力強く生きていけるのだと。
目を伏せ祈る末娘さんの隣で、鈴を鳴らす道化は音もなく笑っていました。
これで一段落です
次はズガガがメインの予定です