早起きすると猫に会う
領主様のご厚意で超がつくほどの高級宿にタダで、タダで泊まったことのん。
贅を尽くした豪華な食事も、ふっかふっかのキングサイズのベッドも素敵でしたが、庶民のことのんには合いませんでした。
仕方なく部屋の隅の床に毛布にくるまって寝ました。
それでも肌触りがよすぎて若干夢見が悪かったそうです。
翌朝、窓の外で小鳥が鳴くよりも早くことのんは目を覚ましました。
明るくなりかけた空にはまだ星が散っています。
ベランダにでて星の輝きを数え、今日の運勢を占っているとカタリと階下で音がしました。
窓から身を乗り出してみれば、淡い茶色の猫が歩いています。
キョロキョロとあたりを見ていた猫はふと上を見上げ、ことのんにそのハシバミの目を向けました。
ことのんはギョッとしました。
猫が、ことのんを見て笑ったのです。
「みーつけた」
ことのんの目の前にはあの魔族の少年が立っていました。
背中には銀に光る四本の羽。
魔術師さんが炎で焼いたはずなのに新品のように輝いています。
「昨日の今日だ。まさか、忘れたなんてことはないだろう?」
少年の細い指がことのんの頬を滑ります。
確認しなくともことのんが、こんな美少年を、忘れるはずがありません。