そして救いは現れる
ことのんたちと末娘さんを人質に取った盗賊たちが向かい合います。
正直、人質さえなければ剣士さんと魔術師さんの実力からいって、すぐに勝負はつくはずです。
汚くわめき散らす盗賊と、痛みに耐え気丈に反論する末娘さん。
空気が硬く張り詰めて、息苦しささえ感じます。
そんな状況は一人の人物の乱入によって打ち砕かれました。
「その娘を放すがよい!」
深く張りのある声が強盗たちを叩き意識を奪います。
入ってきたのは馬車であったおじいさんでした。
手をまっすぐに挙げて強盗たちの意識を残らず刈り取ったおじいさんは、そっと末娘さんの傍らに立つと手を引いて立たせてあげます。
「ありがとうございます。助かりましたわ」
「いや。ご無事で何よりでございます」
花が綻ぶような笑顔で末娘さんは笑います。
ことのんはおじいさんの乱入に驚いて声を上げました。
「禁術を使うような魔術師じゃ。お主の腕を信じていなかった訳ではないが、心配でな」
茶目っ気たっぷりにおじいさんは魔術師さんに笑いかけます。
頬を膨らませてそっぽを向く魔術師さん。
どうやら師弟関係だったようです。
そう言うことは馬車で会ったときに言って欲しかった、と、ことのんは思いました。