一息つく暇すらなしに
まだ二つ目の町なのに厄介ごとがどんどん降りかかってくることのん。
剣士さんと魔術師さんのおかげで、魔族の少年から何とか無事に末娘さんを取り返すことができました。
魔族の少年が消えた先を、ことのんはぼんやりと目で追っていました。
そういえばことのんは未だに機能性ゼロなメイド服です。
着替えたいな、と思っていると、隣に立っていた末娘さんが後ろへ倒れ込みました。
とっさに末娘さんを庇おうとしたことのんですが、剣を振られ下がることしかできませんでした。
「化け物め、よくもよくもよくもよくも!おい、お前等、領主のとこのやつだろ!百万ギメル用意しろと伝えたはずだ!とっとと持ってこねーとこの娘、なぶり者にすんぞ!」
口汚く叫んだのはさっきまで何をしても起きなかったむさ苦しい男たち。
どうやら魔法をかけていた少年魔族が離れたため、魔法が解けたようです。
いらない置きみやげです。
だらだらと流れる汗と、荒い呼吸は先ほどまでの悪夢の影響でしょう。
男たちの目は真っ赤に血走り、乱暴に末娘さんの金髪をつかんでいます。
ここまで来てようやくことのんは思い出しました。
どうやらこの男たち、馬車を襲った強盗とまったく同じ人たちのようです。