秘めし過去を暴く悪夢
昔、『秘めし過去暴く悪夢』と呼ばれる禁術がありました。
他人の夢の中から侵入し、その記憶を盗み見る魔法です。
これを使えば、ことのんのあーんなことも、こーんなことも丸分かりになるのです。
しかしその利便性とは裏腹に、人間に制御できるような優しい魔術ではなく、魔物でなければ満足に扱うことすらできないのです。
よってことのんたちは、その胡散臭い情報屋は魔物である可能性が高いと判断しました。
もしくは魔物を使役している特殊な魔術師であるかです。
さらわれた末娘に、襤褸を纏った男に、禁忌の術を使う情報屋。
やっかいごとがさらに大きくなりました。
「禁術が使われたとなると、それは国への反逆と同意だ。娘のこともあるが、その情報屋、一刻も早く見つけださねばなるまい」
領主様は渋い声で言いました。
そこで魔術師さんがある提案をしました。
情報屋は魔物か魔物を使役している。
ならば魔物を捜せばいい、と。
人間を捜す魔法と魔物を捜す魔法は大きく違います。
人間を捜す魔法が米粒の中からもち米を探すようなものなら、魔物を捜す魔法は米粒の中から殻付きの落花生を探すようなものです。
探すのはより簡単になり、隠すのはより難しくなるのです。