旅立ちの空は赤く染まっていた
王女を恐ろしい魔王から救い出すことになった初心者勇者ことのん。
王様もさすがに心許ないと思ったのか、武器と旅のお供を二人くれました。
ことのんのお供になった二人は、それぞれお城でも有数の実力を持ったすごい人です。
剣士さんは女だてらに騎士の中で一番強くて格好良く、女の人によくモテます。
魔術師さんは黒魔法も白魔法も自在に使いこなす才女として有名です。
ぶっちゃけこの二人がいれば勇者ことのんの活躍はないだろう、と、お貴族様が小さいつもりの声でお喋りするほどです。
ことのんもその意見には全面的に賛成でした。
出発の前にお城で剣士さんから簡単な戦い方を、魔術師さんからは簡単な魔法を教えて貰ったことのん。
時々うっかり手加減し損ねることもありましたが魔術師さんに黄金のお菓子を貢ぐことで事なきを得ることができたりできなかったり。
出発の日の朝、魔王のいる東の空は不吉なほど真っ赤に焼けていました。
ことのんはとりあえず荷物の中に合羽があるかどうかを確認しました。
「では頼んだぞ、勇者ことのん。王女を必ず救ってくれ」
すらりとした長い足に王様がくれた二本のタガーナイフをつけ、勇者ことのんとその愉快な仲間達は旅にでたのです。