勇者がいるから事件が起こる
魔王にさらわれた王女様を救う旅に出た勇者ことのん。
途中立ち寄ったポポロンの町で、突如起こった領主様の娘の誘拐事件。
悲嘆にくれた領主様は勇者に一抹の希望を託します。
どうやら勇者になったことのんの事件に巻き込まれる率は、すごいことになっているようです。
「勇者殿はただお強いのではない。賢く気高く、そして何より慈愛に満ちておられるのだ」
いけしゃあしゃあとことのんからかけ離れすぎた勇者の理想像を説明しだした老人にことのんはちょっぴり殺意がわきました。
「もし娘が帰ってきたならコンテストの賞金の倍、二十万ギメルをやろう!これが私の出せる限度なのだ」
領主が二十万ギメルぽっちしか出せないというのは嘘っぽいですが、それでも大金であることには代わりありません。
ことのんは渋々引き受けることにしました。
お金は大事なのです。
魔術師さんと剣士さんに合流し、事情を話すと呆れられた目で見られました。
魔術師さんはため息を一つつくと捜し物の魔法を発動させます。
これは城下町で猫を探すときにも使った魔法です。
しかし地図の上に浮かび上がってくるはずの目印がいっこうに出てきません。
どうやら強力な妨害魔法がかかっているようです。