招いていない客が来た
王女様を救う旅の途中、コンテストの最終種目に挑むことのん。
対応するのは招かれざる客。
これは相手の言動や服装、仕草をつぶさに観察し、臨機応変に対応を変える必要があるやっかいなものです。
身分が高いものならば丁寧に、乱暴なものなら刺激しないように。
それでいて素早く追い払うことが必要なのです。
カンカンとノッカーの音が響きます。
扉を開けると立っていたのは襤褸をまとった一人の男でした。
ニヤリと笑った口からは金歯が覗き、金には不自由していないことを示しています。
襤褸な服はダミーなのでしょう。
「旦那様にぜひお聞かせしたいことがあるのですが、よろしかったですかな?」
ことのんは外へ完全に出て扉を後ろ手に閉めました。
これで男は簡単には屋敷に入れなくなります。
「内密なお話ですので中で話したいのですが」
ことのんは視線をしっかり男に合わせ、失礼にならないように両手を重ね、背筋を伸ばし拒絶します。
すらっとした身長の高いことのんが毅然とした態度をとると、それだけでなかなかの迫力があります。
「では、代金は後払いで結構でございます。こう旦那様にお伝えください」
お嬢様の居場所を知りたくば百万ギメルを用意しろ、と。