純粋な期待ほど重いものはない
勇者ことのんは北西に向かう馬車の中、強盗に襲われていました。
たまたま乗っていた謎のおじいさんが馬車に魔法をかけてくれたのですが、どうやらことのんも戦いにいかなくてはならないようです。
「ゆ、勇者!?よかった!俺たちは助かるんだ!」
「ああ、神よ。この幸運に感謝します」
「そうだ!俺のようなイケメンがこんな所で強盗にやられるわけがない!」
若干一名勘違いもいますが、馬車のお客さんたちは、なぜかみんなそろってイケイケムード。
ことのんは魔法で安全な馬車から出たくありませんでしたが、この衆人の期待の中、出ないわけにはいきませんでした。
空気が読めるというのはこんな時に不便です。
そろりと御者座の方に歩み寄ると、外からは鉄砲の音と爆発の音がします。
どうやら魔術師さんが強盗と遠距離戦を繰り広げている模様。
出て行く意味があるのだろうかと、ことのんは真面目に悩みました。
下手に出て行き、剣士さんと魔術師さんの足手まといになったりしたら、どうなることか。
ことのんはお城での特訓を思い出し、ちょっと震えました。
お金は大事なのです。
どうしようか悩むことのん。
そんなことのんの背中を、道化は思いっきり突き飛ばしました。
道化は某不思議の国の笑う猫的存在ですので、道化に向けた「いつ、どこで、なぜ、どうやって……etc」の質問はお茶漬けのごとく流して下さると嬉しいです。