再開にともなう無責任
使い物にならなくなった剣を勇者ことのんは拾い上げました。
鉄の塊であるはずの剣はことのんでも片手でもてるほど軽くなっていました。
ことのんがふと顔を上げると人や魔族が緩く円を描いて立っています。
その中心にいたのはタマ様と会長様でした。
タマ様にもたれるように座っていた会長様がその手でタマ様の背を撫でます。
まるで甘えるようにタマ様はその手にすり寄りました。
「ありがとう、タマ。助けに来てくれたんだね」
タマ様を撫でるその手は金に変色した右目に当てられます。
「助けていただいてありがとうございます。そしてタマも、お世話になったみたいで」
タマ様がズガガとなったことを会長様は薄々察しているのでしょう。
その綺麗な目をうっすらと水の膜が覆います。
「待て、はやまるな。私は『ぬっこぬこの会』会長殿に恩を売るために行動しただけだ。後腐れの残る
ような方法で商人に十分な恩が売れるとは思っていない」
美形の魔族の反論にその場にいた全員が呆気にとられました。
「私がズガガから戻す方法もなくタマ殿に施術させるような無責任な男に見えるか」
口には出しませんでしたが、無責任というよりも軽薄そうに見える外見だとことのんは思いました。
スペースを加えました。