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人木 雪華のバイオリン
『人木』
嘆き悲しんで自ら命を絶った者は
大樹となって天を目指す
然し紅い樹液は美味なるワイン
枝葉は火を生み
幹は社台の柱となる
切り株は新芽が芽吹き獣の餌になりながらも大樹に成っていく
大樹はその身の他者に捧げ天を目指す
天はただ沈黙を守る
『雪華のバイオリン』
ナタリー諸島のボブボブの木を50年干して海獣タンドルコの髭 で出来たバイオリン
ドークンバルズの森にある柏の木とアーレンホッグのキリンの 皮の弦
マーメイドのハープに似た魔力を持つ
雪華の唄はこのバイオリンの為に何人もの叫びと涙のインクで 恋人と子供の左胸の皮に書き込められた音符
死者の導はその名の如く雪原の命
静かに眠るレクイエム
愛する者の怨みと裏切りが心に響く
死者のみが聞くことの出来る幻の唄




