第9話 人生初のヘッドハンティング
すっかり村に馴染んだ照平は、「困り事解決します」という看板を立てて、少額だが解決に対する報酬を得て生計を立てるようになっていた。
その噂は村だけで留まらず、「物知りな男がいる」と近隣の街にも広がっていった。
ある日、村の外から見慣れない馬車が長老のもとに訪れた。
馬車はテルが乗っていたものより豪華で、漠然と偉い人が乗っているのだろうというのが分かった。
馬車が到着してから数分たって、照平は長老から呼び出しを受けた。
照平が長老の家に入ると、そこには見慣れない数人の男がいた。
その中の1人がこの地方一帯の領主であるアルベルトであった。
「きみが照平君か。」
アルベルトの語り口はとても穏やかで、第一印象で人間性の高さを感じられた。
さすが領主というだけある。
「は、は...はい」
照平はこういう場に慣れていないため、緊張から返事に詰まってしまう。
「照平君。もしよかったら、うちで働いてくれないだろうか。住む場所と食事は用意するし、もちろん報酬も払わせてもらうよ。」
これはまさか!!
......ヘッドハンティングというものではないだろうか!!
照平は頭に雷が落ちたくらいの衝撃を受けた。
元の世界でキャリアに行き詰まっていた照平にとって、ヘッドハンティングは夢のまた夢である。
こんな日が来ることを想像できただろうか.....
でもちょっと待てよ......
照平は慎重に言葉を選んだ。
「あの......大変ありがたいお話なんですが、どんな仕事をすればいいのでしょう?この村でやっていたように困り事解決をすればいいのでしょうか?」
ヘッドハンティングなんてうまい話あるのだろうか。
もしかしたらブラック企業並みに過酷な労働をさせられるかもしれない!
アルベルトは優しく微笑んだ。
「仕事内容をお伝えしなければ決められないね。失礼した。あまりここで詳しくは言えないのだが、私のそばで相談役として力を発揮してほしいと思っている。」
「相談役......ですか。」
悪くない気がするけどどこか釈然としない。
ほんとにただの相談役なら話がうますぎるのではないか。
「はぁ......」
その時長老が深くため息をついた。
「照平は今やこの村になくてはならない存在です。照平がいなくなるのは村にとって大きな痛手だ」
長老の表情、語り口から本当にそう思ってくれているんだろうということが伝わってくる。
「しかし、照平はものすごい知識の持ち主であり、その知識を使ってもっと広く多くの人を助けるべきだ。アルベルト様の元で働くことはたくさんの人を助けることになり、また、巡りめぐってこの村のためにもなるだろう。」
長老......そんな風に考えてくれていたのか。
「残念ではあるが、村としては快く送り出させてもらうよ。」
確かに、今後のことは不安だ。
でも照平自信もブラウズに大きな可能性を感じていた。
「長老...ありがとうございます。アルベルトさん。仕事のお話、お受けいたします。」
アルベルトはほっとしたようにうなずいた。
「では、準備ができ次第お迎えに参りましょう。改めて、よろしくお願いしますね。」
アルベルトから差しのべられた手に、照平は明るい未来を感じた。
そして2人は固い握手を交わしたのだった。
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数日後、迎えの馬車に乗り、照平は村を出た。
誰かに頼んでもいいようなものなのに、アルベルト自ら迎えに来てくれた。
馬車の中。
「照平。2人きりで話すのはこれが初めてだね。改めてよろしく頼むよ。」
アルベルトは丁寧に照平に語りかけた。
元の世界で言ったら県知事とかそういう立場になるのだろうか。
アルベルトからはやはり人間性の高さと品格を感じた。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
照平は少し緊張気味に応えた。
すると、アルベルトは思いがけないことを言った。
「ところで照平。君はもしかして異世界から来たんじゃないか?」
つづく




