第8話 ルール2 価値の提供
「ブラウズ」というバリューを得た照平は、村になくてはならない存在となった。
「ブラウズ」は、この世界の知識を検索するだけでなく、元の世界の知識と結びつけて最適解を導き出すこともできた。
「照平さん!今年は作物が不作でどうにかならんか?」
「照平!子供の体調が悪くてね...何かいい薬草はないだろうか?」
照平のもとには様々な困り事が寄せられるようになり、照平はその全てに対応した。
「ありがとうございます!調べてみますね。」
作物の不作は、土壌の情報と気候の歴史を検索し、適切な作物の選定や輪作の時期を提言した。
病気の治療は、ブラウズで古代の薬草の文献を読み込み、元の世界の知識と照合し、感染症に効く薬草の調合を助言した。
照平の提言は、すべて村の習慣を尊重し、その土台の上で行われた。
村人たちは彼の提案に積極的に耳を傾け、協力した。
「照平くんは我々のやり方を馬鹿にせず、受け入れてくれた。だから、彼の話には価値がある」照平は村人からの信用が積み重なっていることを感じていた。
悩み相談が村人とのコミュニケーションの場となり、照平と話したことのない村人はいないほどになった。
いつしか照平の呼び名は「旅の者」から「照平」へと変わっていた。
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ブラウズを得た照平はこれから異世界生活が始まるんだ!という興奮と同時に、今までのことを思い返していた。
確かにブラウズはものすごいバリューだ。
でも、もし最初からブラウズを持っていたとして、今のように村の人に受け入れられただろうか。
まずはその環境のルールを守って信用を得る。
そして、その信用の上で、初めて自分の価値が生きる。
信用がなければどんな価値を持っていても活かすことはできない。
もし今、元の世界に戻ったらもう少しうまくやれるかもしれない......
照平は、異世界で初めて、過去の失敗を振り返り、そして、それを乗り越える可能性を感じていた。
そして、同時に「自分が今いる場所でどんな価値を提供できるか」ということの重要性も感じていた。
「あのブタゴリラ社長の問いは正しかったんだ。『君は結局何ができるの?』……俺は、その問いに答えられなかった。」
照平は、遠い故郷の空を思い浮かべながら、穏やかな笑顔を浮かべた。
転職は、新しい環境への転生だ。
新しい人生への招待、つまり内定をもらったら、まずその世界のルールと習慣を受け入れる。
文句を言うのは、その世界のことを知り、信用を得てからだ。
そして、自分が最も貢献できる価値を、求められている形で提供する。
それができれば、世界はどこへ行っても、自分を受け入れてくれる。
照平は今、異世界で初めて、過去の自分を清算し、満たされた日々を過ごしていた。
彼の異世界生活は、ここからようやく始まろうとしていた。
つづく




