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転職に失敗し続けた俺が、異世界で転職成功の極意を掴んで勝ち組目指す  作者: むらさきじゅんぺい
第4章 ヘヴィロック 編

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第29話 なんか合わない人っているよね、それ


――もう、どこかに行ってしまおう。


独り暮らしのアパートは職場からバスで15分程度の場所にある。

今向かっているのは、アパートと反対方向の駅だ。


社会人になって七年が経つ。

顧客からの理不尽なクレーム、担当案件のプレッシャー、社内の人間関係など、これまでに仕事で嫌な思いをすることはあった。


しかし、社会的な立場を全て投げ出して消えてしまいたいとまで思ったのは、今回が初めてだった。


「照平くん、君は今まで何をやってきたんだ?」


社会人七年目でこの言葉を投げかけられるのは、精神的にかなりきつい。


でも、上司からのこの言葉は真っ当だった。


商店街を抜け、駅へと続く大通りに出る。

大通りは多くの車やバスが行き交うが、歩道を歩く人はまばらだ。


上司のペースに合わせて飲んだため、それなりに酔っているはずなのに、不思議と頭は冴えていた。


駅に着くと電光掲示板を確認する。

東京行き上り電車の終電は22時19分。


まだギリギリ間に合う。


急いで改札を抜け、ホームへ続く階段を下りる。


迷いはない。

もう、あの場所に戻りたくないんだ。


発車を知らせるベルが鳴る。

電車はゆっくりと動き出し、漆黒の闇に吸い込まれていった。



採掘場での仕事は、早速次の日から始まった。


採掘の仕事は思った通りの重労働だった。

しかし、この世界に来て、朝から晩まで農作業をしたり、ルメンヴァル公邸の雑用をしたりする中で、体力がついてきたのか、何とかついていくことができそうだった。


それに、一緒に働く人たちも気のいい人ばかりだった。

採掘場で働く人と言えば、屈強な若者を想像していたが、高齢化なのか50代くらいのベテラン勢がほとんどで、こちらが30代というだけで若者扱いしてくれたし、可愛がってくれた。


ひとつだけ想定外だったのは――


「照平さん、ヘルメットはちゃんと顎紐をつけて弛みがないようにしてください」


俺のお世話係兼教育係をしてくれるのが、ジークだということだ。


はっきり言って、ジークは一番苦手なタイプだ。

俺が相手より下手にでたり、うまく根回しをすることでコミュニケーションをとるタイプなのに対し、ジークは知識やスキルを盾に真っ向からコミュニケーションをとるタイプだ。

このタイプの人間は必要以上に気をつかうということはしない。

こちらが気をつかって話をふっても、素っ気なく返されて会話が続かない。

二人でいる時間は当分気まずさとの戦いになりそうだ。


そんなジークは、平均年齢が高いバルカス鉱業の中で、30代前半という若さで幹部となり、経営企画を担当している。

ルメン・ライム枯渇問題についても、ジークを中心に対策チームが組まれ、検討が進められているということだった。


そのため、俺はこの対策チームの活動を評価して資金援助の可否を検討しつつ、一緒に対策を考える立場だ。


採掘作業でコミュニケーションをとり、信頼を貯めつつ、対策チームと共に問題解決していくのだが、コミュニケーションが順調な一方、対策チームの方は既に行き詰まっていた。


「ジーク、先日までですべての採掘ポイントの調査が終わったが、やはりダメだ。ルメン・ライムの新たなポイントは見つからない」


「そうですか......」


年上のメンバーから報告を受け、ジークが残念そうに応えた。

対策チームのメンバーは、皆リーダーのジークより年上だ。


対策チームは既に詳細な調査を行い、対策を検討していた。

その上で資金援助を申し出ていたのだ。


「そろそろ別のプランを進めた方がいいんじゃないか?このままじゃ埒が明かない」


別のメンバーが提案する。


「もう少し、調査範囲を広げてみましょう」


ジークはルメン・ライムの採掘ポイントを引き続き調査する方針のようだ。


(ブラウズ!ルメン・ライムが採掘できる新たなポイントを調べてくれ)


対策会議の最中、他の人にバレないようにブラウズを起動する。


『ヘヴィロック大採掘場には、現在把握されている以外に、ルメン・ライムが採掘できる場所は見つかっていません』


そうだよね。

ブラウズは書物とか言い伝えとか、あくまでも人類が把握している情報を検索してくれるだけだ。

その情報をもとに問題解決するのはこっちの仕事というわけだ。


そして――


『ヴェルサの未完の研究ノート』


『研究ノートには鍵が掛かっていて閲覧できません』


もはやテンプレである。


ミカが二冊目の研究ノートを持っていることが分かったあの後、ヴァレリアと共にミカの研究ノートを見せてもらった。


研究ノートにはヘヴィロック大採掘場の地図と『Sith-Spira(シズ-スピラ)』のメモ書きがあるだけで、なぜその結論にたどり着いたかは記載されていなかった。

地図が記載されていたページが研究ノートの最初のページだったことから、どうやら研究ノートはまだ何冊かあって、ミカが持っている研究ノートに続く、前の研究ノートに結論にたどり着くまでの思考過程が記載されているのではないか、という結論に至った。


ヴェルサさんの研究ノートに書いてある情報だ、例えルメン・ライムではないとしても、掘れば問題解決に繋がる何かが出てくる可能性が高い。

しかし、今分かっている情報だけで採掘を提案しても、先日のように却下されるだけだ。


まずは俺が提案したことに対して、みんなが耳を傾けてくれる状況を作らなければならない。


名付けて『モテモテ大作戦』だ。



つづく


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