第27話 威圧的な態度には低姿勢で対応するしかない
「すみません、遅くなりました」
申し訳なさそうな笑顔と、声のトーンを意識的に作り、なるべく低姿勢で部屋に入る。
こういうのは無駄に得意だ。
すると、岩石のような男はチッ!と舌打ちをして、大股を開き腕組みの姿勢で勢いよくソファーに座り直した。
もちろん、こちらを睨んでいる。
おぉこわ。
部屋には、リカルド、ヴァレリアのルメンヴァル行政側と、岩石男が対峙するように座っていた。
リカルドに手招きされ、ルメンヴァル行政側に座る。
「バルカス殿、紹介します。最近新しく入りました、照平です。以後お見知りおきください」
リカルドに促されお辞儀をする。
岩石男、もとい、バルカスは相変わらず機嫌が悪そうにこちらを睨んでいる。
「照平、こちらはバルカス殿です。ルメンヴァル採掘協会会長でバルカス鉱業の社長でおられる」
なんかとても偉い人のようだ。
「バルカス殿、照平も参加したところで、もう一度話を整理しましょう」
リカルドが提案すると、バルカスもうなずいた。
バルカスの嘆願内容は、ルメンヴァル行政から資金を援助してほしいというものだった。
この嘆願内容を理解するには、まずルメンヴァルの産業を紐解かなければならない。
ルメンヴァルは古くから、鉱石の採掘をして売るというのが主要産業であり、中でも「ルメン・ライム」という鉱石をメインに採掘している。
ルメン・ライムは建築資材としてとても優れており、他の都市へも輸出している。
そんな、ルメンヴァルにとって大事な産業である鉱石の採掘は、元々公営事業だったこともあり、多額の公的資金が投入されていた。
民営化された現在もなお、助成金という名の公的資金が毎年支給されている。
ルメンヴァルにとって大事な産業ではあるものの、すでに多額の資金を投入しており、追加で資金投入するにはそれなりの理由がいるのだ。
そんな中、今回改めてバルカスが資金援助のお願いをしに来たのは、ルメン・ライムの枯渇により、ここ最近で業績が一気に悪化したからだった。
「バルカス殿、ルメン・ライムが枯渇しては資金援助しても一時しのぎにしかならないでしょう。先ほども申し上げたが、そんな状況で援助はできかねます。何か他に資金繰りの手だては考えているんでしょうか」
「だぁかぁらぁ!今別のポイントを探してるところだって言ってんだろ!ルメン・ライムが出てくりゃ業績は一気に回復するんだ。それまでの繋ぎなんだよ」
ルメンヴァル行政側の顔色は優れない。
枯渇しているという話が本当なら、別のポイントから出てくるなんて楽観的すぎる。
リカルドはしばし考えた後、なんとか話を前に進めようと口を開く。
「話は分かりました。しかし、何も確認せずにお金は出せません。実際に現場を確認した後、判断させてください」
バルカスはその言葉に納得したのか、少し表情が緩んだ。
「あぁ、いいぜ。実際に見てもらった方が現場の苦労が分かるってもんだ。早速だがリカルド、いつ見に来るんだい」
「いえ、今回の件はこの照平が担当します」
えぇ!?
思わずリカルドを見る。
「はぁ?こんな小僧が担当だぁ?ふざけんじゃねぇ」
初担当がこんな強面のやっかい案件だなんて、こっちだって遠慮したい。
バルカスさん!もっと強く拒否してくれ。
その時、口を開いたのはヴァレリアだった。
「バルカス様、照平はとても頼りになりますし、きっと問題を解決してくれますよ。それに私も現場に同行させていただきます」
ヴァレリア、余計なことを(泣)
バルカスに向かって、ヴァレリアはにっこり笑いかける。
これは猫を被っている時の笑顔だ。
初めてルメンヴァル公邸に来た時のことを思い出す。
「フンッ!資金が出るなら誰が来たって構わねぇ。小僧に嬢ちゃん、せいぜいよろしく頼むぜ」
「えっと、はい。よろしくお願いします」
もう、引き受けるしかなさそうだ。
なめられないよう、精一杯爽やかな笑顔を心がける。
こうして、やっかいな案件を引き受けることになってしまったわけだが、ヴァレリアに頼りになると言われたのは、満更でもなく嬉しかった。
◇
バルカスが退出すると、ヴァレリアも部屋に戻り、リカルドど二人きりになった。
「照平、申し訳ないがよろしくお願いします。今人手がないもので、どうか協力してください」
雑用だけでなく、行政案件も任せてくれるということは、ある程度認めてくれたということだろう。
頼られるのは悪い気がしなかった。
「分かりました。やってみます」
むしろ頼られるとやる気がでるタイプだ。
「ついては照平、今回の案件ですが、資金を出さないで済むよう、うまくまとめてください」
「え?」
もしかして今、いきなり難易度上がった?
つづく




