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転職に失敗し続けた俺が、異世界で転職成功の極意を掴んで勝ち組目指す  作者: むらさきじゅんぺい
第3章 不登校少女 後編

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第21話 ビールが美味しいのは頑張ってる証拠

「オリバーさん!この写真は......このヴァレリアにそっくりな女性はもしかして......」


オリバーは少しバツが悪そうに笑った。


「その女性はヴェルサ。ヴァレリア様の母親であり、ワシの自慢の弟子じゃった」


「じゃった?それはどういう......」


照平が言いかけると、オリバーはそれをさえぎるように酒瓶をならした。


「まずは乾杯しよう」


---


「乾杯!」


グラスをならすと、オリバーは勢いよく酒を体に流し込む。


「ぷはぁー!仕事の後の酒は格別じゃワイ」


照平も負けじとグラスの酒を一気に飲み干した。


「おぉ?しんぺい。お主なかなかイケるクチじゃな?」


照平は口唇についた泡を指でぬぐいながら、まぁそうですね。と笑った。

お酒は弱くないし、飲み会の場は好きだった。

特に新卒で入った職場では、毎週金曜日に同期と飲みに行くのが何よりの楽しみだった。


そんな照平が、職場の人との飲み会を拒むようになったのは、転職してからだ。


久しぶりの酒と、一気飲みしたせいで酔いが回ってきた。

この勢いでさっきの写真の話を聞いてみることにした。


「あの、ヴェルサさんのことなんですけど......」


オリバーは一瞬考えるように間をおいた。


「今日はうまい酒が飲めたし、少し昔の話をしようかのぅ」


そう言うと、ゆっくり言葉を紡いだ。


「ワシは古代ルメンヴァルを専門に研究する考古学者じゃった。いつからだったか、ヴェルサはワシの元で学ぶようになった」


(このおじいちゃん考古学者だったのか)


「ヴェルサはとても好奇心と探究心が強くてな。教えたことをものすごい勢いで吸収していった」


(好奇心と探究心。どこかで聞いたような言葉だ)


「ヴェルサの知識、思考はワシをとっくに越えていた。自慢の弟子じゃったよ」


じゃった......


「オリバーさん。今、ヴェルサさんは......」


オリバーは何かに思いを馳せるように遠くを見つめた。


「あれは三年前じゃったかな。ヴェルサは古代ルメンヴァル遺跡の探索中に不慮の事故で命を落としてしまったのじゃ」


「そ、そうだったんですか......」


まったく気になっていなかったわけではなかった。

でもルメンヴァル公邸では誰もヴァレリアのお母さんの話をしなかったし、触れてはいけないような気がしていた。


オリバーはしみじみと酒をすすると、大きく息を吐いた。


「ヴェルサは......こんな若さで命を落としていい人間じゃなかった。ワシと出会っていなければ、ワシが古代ルメンヴァルの研究を教えなければ、今でも元気に生きていたかもしれない。......ヴァレリア様もワシを恨んでいることだろうな」


オリバーのそれは、長年秘めていた思いを吐き出すようで、照平はどんな言葉をかけたらいいか分からなかった。


ヴァレリアはお母さんから教えてもらった古代ルメンヴァルの地質学や歴史学を、今もみずから追い求めている。

オリバーさんを恨んでいるなんてこと、あろうはずもない。


でもそれは、オリバーさんも分かっているんじゃないか?

分かった上で、そう思うしか気持ちを整理する方法がないのかもしれない。


照平は迷いに迷ったが、酒の力も借りてやっと言葉を発した。


「......そんなこと......ないと思いますよ」


そして、精一杯穏やかな笑顔を作った。


---


オリバーとの飲み会は深夜まで及んだ。


しんみりしたものの、その後はオリバーの若かりし頃の自慢話に終始した。

目上の人と飲む時はだいたいそんなものである。


オリバーが寝落ちすると、照平もだんだん意識が朦朧としてきた。

そんな中で、ヴァレリアがヴェルサさんと過ごしたであろう日々に思いを馳せていた。

ヴェルサさんと古代ルメンヴァルの話をする時間はヴァレリアにとってこの上なく充実した時間だったことだろう。


でも......


もしかしたら、その思い出がまぶしすぎて、逆に過去に囚われてしまっているのかもしれない。


そんなことを考えながら、照平もまた深い眠りにつくのであった。


---


「照平!お前さっきの打合せ中ずっと寝とったやろ」


テーブルを囲む同期たちの笑い声で場が盛り上がる。


店員の威勢がいいかけ声、乾杯のグラスの音、焼き鳥の匂い。

金曜日の居酒屋は活気と仕事終わりの解放感で満ちていた。


「いやぁ、バレてましたか」


まったく反省などしていない口調で返す。


「そろそろ部長にキレられるで」


「河内さん!部長のいつものやってくださいよ!あのモノマネ!」


別の同期が焚き付ける。


「おぉ!やるか?」


上司の愚痴、仕事の失敗、どうでもいい世間話。

この同期との飲み会が照平のすべてだった。

この時間があったから社会人一年目の大変な日々を乗り越えられた。


この時、俺たちは間違いなく同じスタートラインに立っていた。


(これ以上に気の合う仲間と出会うことなんて二度とない)


そう思う照平こそが、もう戻れない過去に囚われているのかもしれない。



つづく


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