第20話 ポポポ ルルン
「ちょっと出るのが早かったか。少し街をふらふらしてみようかな」
オリバーの元に通うようになって2週間がたち、だいぶ道にも慣れてきた。
今日は天気もよく、絶好のお散歩日和だ。
平日の昼間に外出して自由に行動できるというのは、元の世界でデスクワークの仕事が多かった照平にとって、この上なく贅沢な時間だ。
目線が自然と上がり、街全体を見渡すと、いつも見ている景色が不思議とより色鮮やかに見えた。
照平はつかの間の解放感を味わうように、大きく深呼吸して歩きだす。
大通りを少し歩くと、ある店の前に行列ができていた。
「何のお店だろう」
店を覗いてみると、キャラクターグッズが並んでおり、その中でも特定のグッズを目当てに行列ができているようだった。
「ポポポ ルルン?なんだそれ?」
そのキャラクターは、オレンジ色の毛に覆われ、頭の上に大きな目がついている。
行列に並んでいるのはみんな若い女性で、若い女性に人気のキャラクターのようだ。
「おじさん!買うならちゃんと並んでよ!!」
「おじさん?おれのこと??」
後方からの声に驚き振り返ると、行列に並んでいる女子たちがこちらをにらんでいる。
「はい!すみません......」
女子たちの強いプレッシャーに負け、照平はとっさに行列の最後尾に並んでしまった。
(並んじゃったけど、ヴァレリアとの会話のネタになるかもしれないしな......買ってみるか)
30分並んで購入したポポポ ルルンのぬいぐるみキーホルダーは、照平の予想に反して高かった。
---
「今日はこの辺にしておこうかのぅ」
「だぁーーー!!!終わったーーー!!!」
照平は両腕を上げ、大きく伸びをした。
38歳にもなって新しいことを学ぶのはつらいものだ。
ガタガタ......
窓ガラスに風が当たって強く揺れる。
窓から外を見るとすっかり暗くなり、雨が強く降っていた。
「うわ、すごい雨だな。この雨の中帰るのか」
講義に集中していて気がつかなかったが、傘をさしてもずぶ濡れになりそうな雨の勢いだ。
「ありゃりゃ、今日は嵐だな。泊まっていくか?」
「え?」
照平は少し迷ったが、濡れたくないので泊めてもらうことにした。
お願いします。と言うと、オリバーは気を良くしたようににっこり笑った。
「ちんぺい!酒は飲めるんだろう?」
(このおじいちゃん、一緒に飲みたかったんだな)
「えぇ。まぁ」
そうかそうかと、オリバーは機嫌が良さそうに酒の用意を始めた。
(誰かと一緒にお酒を飲むのはいつぶりだろう)
「しんぺい!そこの戸棚にグラスが入っているから取ってくれ」
「はぁい」
(戸棚?あぁこれか)
照平は近くにある戸棚を開け、グラスを取ろうとした。
(ん?なんだこの写真)
戸棚の中にはグラスや食器が並んでいたが、一番上の段にある一枚の写真に目がとまった。
その写真は写真立てに入れられ、大事そうに飾られている。
それを見た照平は一瞬目を疑った。
「オリバーさん!この写真は......」
その写真に写っていたのは、今より少し若いオリバーと赤ちゃんを抱いたヴァレリアによく似た女性だった。




