第18話 相手を知るより勝手に決めつけた方が楽
あの後、ルチアから『うまくいかないこと』の正体を聞いた。
ヴァレリアの知識。
それは古代ルメンヴァルの地質学や歴史学だけにとどまるものではなかった。
この地方一帯を治めるアルベルトの後継者として、ヴァレリアは専門家の指導のもと、幼少期から様々な学問や経験を積んできた。
ヴァレリアもそれが嫌というわけではなく、人一倍の好奇心と探究心で、見るもの、触れるものをものすごい勢いで吸収していった。
しかし、それはルメンヴァルで暮らす一般的な子供が受ける教育とはかけ離れたものである。
13歳でルメンヴァルの公的な教育機関に入学し、同世代と初めて接したとき、ヴァレリアはそのレベルの低さにがく然とした。
(この人たちと話をしてもつまらない......)
それ以来、ヴァレリアは同世代に対して心を固く閉ざし、そこに行くことはなくなってしまったのだった。
照平は自室のベッドに仰向けになり、考えていた。
「学校に行くのって、勉強のためだけじゃないんだよなぁ」
学校に行く主な目的は勉強だろう。
しかしそれだけではなく、共同生活や人間関係を学ぶ重要な場でもある。
アルベルトが、ヴァレリアの教育を専門家による個人教育だけでなく、同世代と学ぶことができる学校に行かせたのも、同じように考えたからなのかもしれない。
「......なんとか行かせられないかなぁ」
ヴァレリアのことを知っていく中で、不思議と照平はヴァレリアの力になれないかと考えていた。
しかし、それと同時に照平の中でモヤモヤした感情も芽生えていた。
(この会社の人たちと話をしてもつまらない......)
今思えば、それは勝手な決めつけだったのかもしれない。
「......よし!」
照平は勢いよくベットから起き上がると、部屋を出た。
そして、ある決意を胸にリカルドの部屋に向かった。
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次の日、ルメンヴァル公邸での午前の仕事を終えた照平は、ルメンヴァルの街に繰り出していた。
公邸の正門はそのままルメンヴァルのメインストリートに繋がっている。
メインストリートを横道に入り、30分くらい歩いたところに古い小さな家が見えてきた。
「ここで合ってるよな?」
照平はリカルドに書いてもらった地図を再度確認した。
「うん。多分合ってる」
意を決して扉をノックしたところ、中から高齢の男性の声がした。
「はいはい。ちょっと待ってね」
しばらくして扉が開くと、高齢の男性が照平を迎えてくれた。
男性は70代くらいに見えた。
背が低く背中が丸まっていて、メガネをかけ、顎に立派な髭を生やしていた。
「リカルドさんから紹介していただきました、照平といいます。ルメンヴァル公邸でヴァレリアさんの家庭教師をしています」
それを聞くと、男性は少し驚いた様子だったが、そうかそうか、とうなずくとにっこり笑った。
「私の名前はオリバー。こんな老人に何のようだね?」
オリバーは眉を上げ、照平に強い視線を向けた。
照平は覚悟を決めたようにうなずくと、オリバーに向かって言った。
「古代ルメンヴァル語を教えてください」
つづく




