第11話 白銀とオレンジの都市
「異世界から来たということは、この先誰にも言わないほうがいい。」
どういうことだろう......
.......もしかして、他からヘッドハンティングされることを心配しているのか?
照平は調子に乗っていた。
アルベルトの口調はどこか照平を心配するような響きだったが、今の照平はそれを感じとることができなかった。
「あの......それは(ヘッドハンティングされることを)心配されているんですか?」
「まぁそうだね......あまり今詳しいことはいえないんだがね。」
やはり他からのヘッドハンティングを心配しているのか......だけど、ここで深入りするのは野暮だな。
「分かりました。覚えておきます。ところで......」
それより、照平には気になっていることがあった。
「わたしの仕事って相談役とおっしゃっていましたけど、本当はどんな仕事なんでしょうか。」
アルベルトは少し困ったように笑った。
たとえ異世界から来た特殊能力持ちであっても、県知事クラスの人物の相談役をよく分からない人間に頼むことは考えにくい。
相談役というのは、それなりの実績と経験を積んだ人間に頼むものだろう。
というか、相談役なんて都合のいい天下り先のイメージしかない。
「そうだね。ちゃんとお話しなければなりません。」
アルベルトの表情が一段と真剣身を増した。
「照平にお願いしたい仕事は......」
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村を出て2時間ほどで、この地域一帯の中心都市であるルメンヴァルに到着した。
ルメンヴァルは中心都市なだけあってメインストリート沿いに店が建ち並び、活気に満ち溢れている。
街のメインストリートを見上げたとき、照平は一瞬、雪が降っているのかと思った。
街路樹の葉が風に揺れるたび、銀色の光が雪のように降り注いでいたからだ。
幹はまるでお互いを抱きしめるように複雑にねじれ、その一本一本が、この街を見守る老兵のような威厳を放っている。
それがこの都市の象徴『銀オリーブ』だと知ったのは、少し後のことだった。
メインストリートをしばらく進むと、白銀にそびえ立つ建物が見えてきた。
ルメンヴァル公邸である。
ここはルメンヴァルの行政の中枢であり、アルベルトの邸宅でもある。
大きな門をくぐると、オレンジ色の花が左右一面に広がっている。
太陽のハーブ『カレンデュラ』だ。
鮮やかなオレンジが建物の白さを引き立てている。
公邸では数人が出迎えてくれた。
彼らはアルベルトの身の回りの世話をしているスタッフなのだという。
そしてもう1人。
この子か......
照平に緊張が走る。
「お帰りなさいませ。お父様。」
屈託のない笑顔を見せる少女の名前はヴァレリア。
アルベルトのひとり娘であり、照平のクライアントである。
つづく




