第97話 琴ちゃんサテライト
さて、例の如く琴ちゃん解説です。
いえーいどんどんぱふぱふ。
今回は、私が愛用して……愛用……はしてないか。“ゴミ箱”こと“アイテムボックス”について解説します。
あんな魔法、ゴミ箱で十分です。持ち運び式ゴミ箱です。
さて、本題に入りますね。
“アイテムボックス”というのは、大きく3つの要素から成り立ちます。
①格納
②保持
③排出
の3要素です。
堅苦しい文章は嫌いなので、ひとつひとつ解説していきますねっ。
①格納
これは、外に落っこちてるアイテムを、空間を切り裂く形で生み出した“アイテムボックス”に入れますよーってことです。
私が“アイテムボックス”にゴブリンの死骸をいつも放り投げているあれです。生きている魔物とかは格納できませんが、それはそれで使い道もありますので別に悪いことばかりじゃないです。
秘技、“アイテムボックス”での圧殺。
②保持
“アイテムボックス”に格納した物体は、きちんと保持できる状態にしておかないといけません。
レジ袋をイメージすると分かりやすいかもですね。レジ袋の底に穴が開いていたら、どれだけ袋に物を入れたとしても落っこちちゃうんです。
私も慣れなかった時は、魔石とかロングソードとか“アイテムボックス”に入れて無くしちゃいました。めっちゃ怒られました。泣くぞ。泣いちゃうぞ。
③排出
まあ、言葉そのままなんですけど。“アイテムボックス”の中に入っているものをぽいって取り出すことです。
基本的に魔法は私達冒険者の脳内で構築するものです。「こういうものを取り出したい」ってイメージすることによって成り立つんですよね。
ちなみに、私が時々使っている“アイテムボックス”を逆さにして重力で落っことすのは、この排出をメインで使っている時です。割と便利。
ひとつひとつ分解して捉えると、魔法だってメカニズムで成立するものなんだって分かるんですけど……結構、そこに辿り着くまでが大変なんですよね。
攻撃魔法の類は、相手に直撃した時点で完結するのですが……“アイテムボックス”は取り出した後の管理も重要となので、結構面倒なんです。
これが、冒険者にとって“アイテムボックス”の会得が難しいと言われる理由ですね。
3つのプロセスを、ほとんど同時にしないといけないんです。
いつぞやに“魔法使用に関するガイドライン”についても説明したと思いますけど、結構魔法ってややこしいですよね。
感覚で出来る人も多いですが、私はなるべく理屈立てた方が得意です。
特に無詠唱魔法を会得する予定なら、こうしたガイドラインに関する理解は必須ですね。同じ魔法でも、出力の調整で全然違う効果になります。
“琴ちゃんキャノン”と“琴ちゃんレーザー”だって、元は“炎弾”という同一の魔法ですし。
え?MP管理?その話は置いておきましょう。琴ちゃんにとって都合の悪い話なので。
さて。
“炎弾”の出力を調整して、2つのオリジナル魔法を編み出している時に閃いちゃったんですよね。
「これ、“アイテムボックス”と掛け合わせたら面白そう!」って。
という訳で、うさちゃんには可哀想ですが犠牲になってもらいましょう。
ごめんねマーダーラビット。琴ちゃん魔法第3弾の犠牲になってください。
足場こそゴブリンの死骸なので地面と比べると不安定です。ですけど、私は何度もゴブリンの死骸なら踏んだことがあるので慣れています。なんで慣れているんでしょうね、んふふ。
高く伸びた草木の奥では、マーダーラビットが未だに土をカリカリと削って巣を作っています。可愛い。
ですけど、それはそれ。これはこれです。
「初めてやるけどー、こうかな」
私は“アイテムボックス”を、2つ生成しました。
と言っても、その2つは同一の役割を担っている訳ではありません。先述した、“格納”と“排出”の機能に分けています。
格納機能を持った方は、私の目の前に。
排出機能を持った方は、マーダーラビットの真上に配置しました。
ちなみにですけど、“アイテムボックス”をいくつも生成できる冒険者というのは私しかいない自信があります。
どこかで“アイテムボックス”をそれぞれの用途に分けて配置してる、みたいなことを言ったかな、って思います。
それも「“アイテムボックス”の中に“アイテムボックス”」を重ねて発動することによって成り立っているんです。新しいフォルダ(5)です。
さて、“炎弾”と“アイテムボックス”。
その2つを組み合わせるとどうなるか、見てみましょう。
「琴ちゃん魔法、第3弾……」
「えっ待って第2弾知らない。というかことちー何しようとしてるの」
ちょっとカッコつけようとしているところで、ゆあちーに水を差されてしまいました。そう言えばゆあちーは”琴ちゃんレーザー“のこと知らないんでしたね。結構面白い魔法になったと思うので、また後でお見せします。
という訳で、“アイテムボックス”の“保持”というプロセスを省略して放ってみましょう。
さあ、皆さん行きますよっ。せーのっ。
「“琴ちゃんサテライト”っ!!」
そう嬉々として叫んだ途端、ゆあちーと麻衣ちゃんが同時に「ぶっ」と吹き出していました。やっぱりいいリアクションをくれるので琴ちゃんとしては楽しいです。
恵那斗とパパは実用性重視なところあるので。なんだかんだ言って、恵那斗も男子寄りの思考ですよね。実用性も分かるんですけど、反応としては薄いので面白くないです。もっと彼女に寄り添って。
そんなノリで放った“琴ちゃんレーザー”は、一直線に“アイテムボックス”の中へと格納。
保持というプロセスが省略されているので、そのままマーダーラビットの頭上に配置した“アイテムボックス”の中から“琴ちゃんレーザー”がそのまま排出されました。
“琴ちゃんレーザー”は、一直線にマーダーラビットを貫通。脳天を貫かれたマーダーラビットは「きゅ……」という悲鳴を漏らしたかと思うと、バタンと倒れて動かなくなりました。気の毒だけど許してね。
「おおーっ!!これだよこれっ。天からレーザービームっ!」
思いのほか楽しいです!
“琴ちゃんレーザー”は実用性しかなかったので面白くなかったのですが、“琴ちゃんサテライト”は天からレーザー光線を落とす形になるので楽しいですね。
その上で魔物だって倒せるので、実用性だって担保しています。
ですけど、ゆあちーと麻衣ちゃんは私がどんな魔法を放ったのか、あんまり理解していないようですね。きょとんと呆けた顔を浮かべていました。
「ん?琴ちゃん、何したの?“アイテムボックス”からビーム出さなかった?」
「ふふ、見てよ麻衣ちゃん。場所代わるから」
「ゴブリンなんて踏みたくないし、良いよ別に……」
麻衣ちゃんはそう言って、草木を掻き分けました。
え、ゴブリンの死骸ですよ。何で踏みたくないんですか?
マーダーラビットの脳天を“琴ちゃんサテライト”によって貫かれ、ものの見事に絶命した姿を見た麻衣ちゃん。
彼女は「ほー……」と感嘆したような声を浮かべていました。
「ピンポイントで“炎弾”を当てたんだねぇ。“アイテムボックス”で発射する位置を調整して、と」
「そう、そうなんだよ麻衣ちゃん。すごくない?面白くない?」
「また変な発想を閃いたんだね、琴ちゃん……」
「ふふんっ」
私にとっては最高の誉め言葉ですっ。
“アイテムボックス”の向きを調整すれば指向性だって持たせられますよっ。“アイテムボックス”を活用すれば、色々と魔法の幅を広げられそうなので楽しいです。
ただのゴミ箱だけで終わらないのが琴ちゃん魔法の楽しさですねっ♪
ちなみにそんな様子を遠巻きに見ていたゆあちーは、ぽつりと呟きました。
「なんでもいいけど、ハンマーから降りてくれないかな」
「あっ、ごめん」
「私の武器、踏み台じゃないんだよー……?」
ゆあちーがジト目でこっちを見ています。
ちょうどいい高さだったので、ずっと踏み台にしていました。ごめんなさい。
それから、私はゴブリンの死骸を再び“アイテムボックス”へと格納しました。またこれは後で使います。
そんな一連の動作を見ていたゆあちーは、いきなり「ぷっ」と楽しそうに笑いました。えっ、なんですかっ。私の何が面白いんですかっ。
「やっぱりことちー、見てて飽きないなぁ。“アイテムボックス”をそんな使い方するの、ことちーくらいだよ」
「“アイテムボックス”には無限の可能性があるからねっ」
「普通は会得だけでも難しい魔法なんだけどねー……?」
ふふ、そう言ってくれると口角が上がっちゃいますね。
素直に褒めてくれるのは嬉しいです、楽しいです。
あ、そう言えば使用MPとかチェックしていませんでしたね。
またどやかく言われるのは嫌なので、先に使用したMPもチェックしておきましょう。
冒険者証を手に持って、いつもの合言葉を発します。
いっせーのせっ。
「ステータス・オープンっ」
すると、“幻惑魔法”を介して眼前にステータスが表示されました。
そう言えば、この“幻惑魔法”を駆使すれば、ダンジョン内でVRゲームとか出来そうですよね。魔物がいないダンジョンだって存在しますし、もっと魔法を社会に活用できないでしょうか。結構人気出ると思うんですけど。
【田中 琴】
Lv:12
HP:105/105
MP:201/215
物理攻撃:46
物理防御:37
魔法攻撃:178
魔法防御:121
身体加速:53
なるほどなるほど。
先に“アイテムボックス”を2回くらい使いましたかね。そのうえで“琴ちゃんサテライト”を使ったので、だいたい消費MPは10前後……と言ったところでしょうか。
“琴ちゃんキャノン”と比較すると無駄が少ないですし、結構良いかもしれませんね。
でもどうせなら、“琴ちゃんキャノン”と掛け合わせたいです。
次は“琴ちゃんサテライトキャノン”でもやってみたいですね。やっぱり大爆発を拝みたいです。ロマンの結晶じゃないですか。
そんな空想を描いたところで、次の戦いに移りましょう。ごーごー!




