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【番外編】ダンジョン配信

カクヨムの近況ノートに掲載した没エピソードを、特別編として掲載します。

「ことちー、配信とか興味ない?」

「配信?」

「そっ、ダンジョン配信」


 ゆあちーは、突拍子もなくそんな意見を提案してきました。

 確かに、それほど有名なコンテンツかと言われたら微妙ですが……魔物のいないダンジョンを紹介する、“ダンジョン配信”を行っている配信者もいますね。

 魔物がいないダンジョン自体、そもそも母体数が少ないです。その為、新たな観光名所のような役割となっていますね。観光業は逞しいです。


 それに加えて、ダンジョンということは当然。魔素が漂っているので魔法が使うことが出来ます。

 当然、冒険者の横暴な行為を避ける為に事前にステータスの開示が求められます。

 ちょっと私達からすれば肩身が狭いので、あんまり行く気にはなれません。


「うーん……ダンジョン配信、かあ……」

「やっぱり乗り気じゃない?冒険者の宣伝になるかな、って配信してるんだけど……どう?やってみない?」

「……まあ、1回くらいならいいかな」

「やった!」


 せっかくゆあちーが提案してくれたことですもんね。

 特に悪いことをする訳でもないですし、1回くらいならやっても良いでしょう。


----


 という訳で、私達は魔物がいないダンジョンへとはるばる訪れました。

 案外、近場にあったのはせめてもの救いですね。電車賃を抑えることが出来ました。


 魔物のいない、通称“無害ダンジョン”へと訪れた私達は、受付の方から危険物の持ち込みの有無、そしてステータスの開示という手続きを受けました。

 ゆあちーは律義にダンジョンアイテム兼武器であるボールペンを提示。ロッカールームへと預けます。私の“アイテムボックス”は片付けることが出来ないので、スキルとして所有していることを事前に伝えました。


「まあ、私達冒険者だもんね。警備のおっちゃんこっち見てる」


 ゆあちーは肩を竦めながら、ちらりと木々の合間に潜んでいる警備のおじさんに視線を送ります。私服警官ならぬ、隠密警官。まるで忍者のようですね。

 警官を含めた、公務員は皆等しく“解除魔法”を会得しています。

 彼らは熟練度の向上を義務付けられており、日々魔法訓練を実施している為に、もはや息を吐くかの如く“解除魔法”を使用することができるそうです。さすがにその道のプロには勝てないですね。


 私達が訪れたのは塔型ダンジョン。どこか神々しい神殿を彷彿とさせる施設ですが、魔物が居ないというのは新鮮ですね。

 周囲を見渡せば、デートスポットとして活用している人達や、家族でピクニックをしている人達で賑わっています。こういう場所としてもダンジョンが機能しているのは喜ばしい限りです。


 ゆあちーはそんな中、スマホを操作し配信アプリを起動しました。


「ことちー、撮るよ」

「えっ、うん」


 スマホをインカメに起動し、配信を開始しました。すると、同接数0の表示と共にコメント欄が映し出されました。

 そんな同接数も、時間経過と共に上昇。彼女の配信を一目見たいと視聴者が集まっていきます。


 ゆあちーは楽しそうな笑顔で、配信を視聴し始めた視聴者に語り掛けました。


「はーいっ!皆さん、こんにちは!yourチャンネルのゆあちーです!」


 天真爛漫の明るい笑顔を振りまく彼女というのは、ずいぶんと映えますね。視聴者の数こそ105人と、さほど多くはないですが。個人配信としては、それなりに見てもらえている方なんじゃないかと思います。


[こんゆあ~]

[今日もゆあちーは可愛い]

[推し]


「はーいっ、皆さんありがとうね!今日はね、ダンジョンにきていますっ。私達冒険者はこういった施設で仕事をしていまーすっ」


 そうして、ダンジョン内の光景を映し出しました。手ブレが激しく、大事な情報が視聴者に届けられていない気がします。大丈夫かな?

 次に、ゆあちーは私に耳打ちしてきました。


(ことちー映していい?)

「?うん」


 別にカメラを回されてダメな理由もないので、私はそのまま承諾しました。まあ、1回ドキュメンタリーのインタビューだって受けていますし。別に今更気にしません。

 許可を受けたゆあちーは、配信画面に映るように私の方へとスマホを向けました。


「今回は、特別に同じ冒険者のことちーを連れてきましたーっ!」

「……どうも」


 ゆあちーのテンションに合わせられる自信もないので、無難に会釈だけします。それでも、視聴者からの反応は上々でした。


[お人形みたい、可愛い]

[何この子天使?]

[はい推し決定]


(まあ、見た目は確かに良いですもんね)


 男性視点から見ても、今の姿というのは確かに美少女です。視聴者の反応に関しても、どこか納得できるものがありました。

 ですが、今回の目的はただ美少女の姿を映し出すことではありません。


 ゆあちーも言っていましたよね?

 冒険者の宣伝になるかな、って。

 

 よし、決めました。

 私が普段からやっていることをお見せしましょう。


「初めまして、視聴者の皆さん。今回は、私が普段からダンジョンで行っていることをお見せしたいと思います」

「待って、ことちー。何しようとしてるの」

「まず、ダンジョンには魔物という存在がいますね。ゴブリンやスライムと言った、旧世代のゲーム内に登場するモンスターが、ダンジョンには存在します。テレビで見たことがある人も居るのではないでしょうか?」

「ことちー、お願い。待って?」


 ゆあちーが慌てた様子でそう話しかけました。ですが、私からすれば何を焦っているのか分かりません。

 ちらりとゆあちーのスマホに映し出されたコメント欄に視線を送ると、困惑の言葉が流れていました。


[何が始まろうとしているんです?]

[授業来た]

[先生みたいな語り口調。何この女の子]


 おっ、皆さん興味を持ってくれていますね。

 さすがに暴動などを起こさなければいいのです。ちょっとくらいならいいでしょう。

 そう割り切った私は、迷わず“アイテムボックス”を起動。中からゴブリンの死骸を取り出します。


「おわーーーーっ!!ことちー!!ダメ!!ストップ!!ステイ、ステイっ!!」

「まず、ダンジョンにはこのような魔物が存在しています。もうこのゴブリンは死んでいるので安全ですが……ダンジョン内では、私達の命を奪おうと襲い掛かってきます」

「戻しなさいっ!こら、ダメだってば!」

「ゴブリンの身体構造は、私達と似通っています。今は解剖してしまっているので、空洞になっていますが……ほら。胸腔があるでしょ?ここに肺が納まっています。胸腔というのは常に陰圧に保たれている必要があります。胸腔が陰圧に保たれることによって肺が拡張して空気を取り込むことが……」

「すとーーーーっぷ!すとっぷ!!それしまって!!片付けて!!」

「むきゅぅ!?」


 唐突にゆあちーが駆け寄って来て、私の口を手で塞いでしまいました。何するんですか。

 その間にもゆあちーの悲鳴は止まりません。騒動を感じ取った警備のおじさんもこちらに駆け寄ってきます。


「あーーーーっ!!配信止められた!?違反扱い喰らった!?!?」

「えっ、映しちゃダメだった?これ」

「ダメだよ!皆ドン引きしちゃってるよ!!!!すみません、すみません!!」


 気づけば、周りの人達もドン引きした様子でこちらを見ていました。

 ……すみません。今片付けます。


 ちなみにですが、聞いた話ですと。

 ゆあちーの配信は、ちょっとだけ話題になったみたいです。すごくバズったかというとそうではありませんが。

 私はネットで一時期、「教授」だの「サイコパス」だの散々な呼び方をされていました。


 美少女は無条件で人気が出ると思っていたんですが。違うんですか?

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