表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/113

第79話 地雷系ファッション

「ゆあちー……恵那斗のこと、別に好きとかじゃないよね?」

「え?」

「う、ううん。気になっただけで……」


 込み上げてくる不安を抑えきれず、ついそんなことを聞いてしまいました。

 呆気にとられたようにゆあちーは目を丸くしています。


 そんな私の不安を感じ取られたのか、ゆあちーは「ぷっ」と吹き出しました。


「ふふっ、あはは……ことちー、不安なんだ?私に彼氏さんが取られるかもって」

「うっ、ち、違うもん……別に……」

「安心してよ、ことちーの大好きな彼氏さん、取る気ないから?」

「……うう」


 “大好き”を否定できなかったので、つい口ごもるしかありませんでした。

 そんな私に対し、ゆあちーは再び抱き着いてきました。


「むきゅ……」

「あーもうっ。そんな不安にならないでよーっ!ごめんね、いじめるつもりはなかったんだってっ」

「……むう」


 どう言葉を返せばいいのか分からず、口ごもることしかできません。そんな私の胸中を感じ取ったのでしょうか、ゆあちーは私を抱きしめていた腕を解きます。

 それから、まじまじと私の身体を見つめてきました。


「な、なにっ。どうしたの?」

「ことちーってさ……あんまりオシャレとか興味ない感じ?」

「……あんまり、オシャレとか分からないし」


 生活の大半を冒険者業に費やしてきた身なので、衣服は必要最低限のものしか揃えていません。オシャレなんて考えたこともないですね。

 これは男性時代からなので、今更気にしたこともありませんでした。“女性化の呪い”に掛かってから、恵那が家を空けていたというのもあって、自分で衣服を揃えるしかありませんでしたし。正直、ランジェリーショップにはもうお世話になりたくありません。

 余談ですが、研修時代に持って行ったパーカーは男性時代に買ったものでした。ぶかぶかでしたけど、まあ着れるから良いかなと思って……。


 素直にオシャレについて理解していないことを白状すると、ゆあちーは楽しそうな笑みを浮かべました。


「そっかー、そうなんだぁー?」

「な、なに……?」


 ニコニコと微笑みながら、ゆあちーが私の方に腕を回してきました。


「じゃあ、今日はことちーをイメチェンしちゃおっかー?冒険者から1人の女の子にしちゃおっかなー?」

「え、大丈夫。大丈夫だよ……?」

「私に任せてっ。ことちー素材良いもん、絶対可愛くなるって!任せて!」

「あ、わわっ。腕引っ張らないで?」

「出発、進行ーっ!」

「あのっ。話聞いてる!?ゆあちー、ねえっ!?」


 こうして、私は成す術なくゆあちーに引っ張られるがまま、ターミナルステーションに隣接する形で建てられた大型ショッピングモールへと連れられました。

 

 どうしても、恵那斗が絡むと強く出られない自分が居ます。男性なのに。男性なのに……うう。

 

 ----


「正直、ことちーって地雷系ファッション似合うと思うんだよね」


 開口一番にゆあちーがとんでもない発言をぶっこんで来たんですけど。

 大丈夫ですよね?私、とんでもない服着させられないですよね?


 そんな不安が込み上げてきて、思わず後ずさりしちゃいました。


「さすがに、それはちょっと……」

「せっかく可愛いんだからさっ、もっと自信もってっ。ほらほらっ」

「あのっ、普通で良いよっ。シンプルな服で……」

「ことちーはちょっとあざとい寄りな雰囲気の方が似合うから、ねっ」


 ゆあちーの中で私の解釈ってどうなっているんですか!?

 全力で突っ込みたい気分でしたが、ファッションに対して理解のない私は彼女に丸投げするより他ありません。


 ですけど、地雷系ファッションはちょっと!元男性には刺激が強いです!

 

 あの。「お前は元々地雷みたいなやつだろ」みたいなツッコミはナシですよ。琴ちゃんに失礼です。


 それからというものの、ゆあちーに振り回されるがままに店舗をはしごすることになりました。


「ここと、ここに行きたいんだけど。ことちー、お金いくらまでなら使える?」

「えっと……じゅ……ううん。3万くらいならいけると思う」

「おっけー、それくらいあればいい感じの服は選べそうだね。安く揃えよっか」


 以前にも触れた気がするんですが、元々そんなにお金を使うような生活をしていなかったんですよね。なので、3万どころか10万くらいまでなら使うことも出来ます。

 ですが、さすがに10万も衣服代に使う気にはなれないので……。

 

 私の予算を聞いたゆあちーは、それでも納得したようです。

 「うん」と頷いた後に私の手を引く形で先導し始めました。


 ----


「あっ、すみません。この服着たまま動きたいんで値札切ってもらってもいいですか」

「かしこまりました。それじゃあ、試着室へ来てもらって良いですか」

「わかりましたっ!ことちー、行くよ」


 なんというか、本当にゆあちーに対応を丸投げする形になりました。今の私は着せ替え人形です。

 ゆあちーは時々「どう?」と私にリアクションを促してくれましたが、正直どう違うと評価すれば良いのか分かりません。男性視点で見れば、どれも「可愛い」の一言で完結しちゃうんですよね。

 

 なので完全にゆあちーセレクトです。

 

 最終的に、フリルの付いた白のブラウスの上から、これまたフリルのついた黒のジャンパースカートを着込む形となりました。よせばいいのにアシンメトリーという形で黒色のリボンが結ばれています。元が銀髪なので、黒のリボンが目立ちます。

 スカートから覗いた生足の先にはロングブーツを履かされました。


 元々のラフな格好はどこに行ったのでしょう。姿見鏡の前に居るのは、誰がどう見ても地雷系の女の子です。


 浮気したら刺しますよ?……なんて言ってそうです。

 あっ、刺しませんよ。ゴブリンじゃないんですから。


「やっぱことちー銀髪だから、黒色が映えるね~、可愛い……!」

「あの、恥ずかしいよ……さすがにこれ、派手すぎない?」

「言わせたい人には言わせといて良いのっ。これで彼氏さんを驚かせることができるね?」

「む、まあ……それは……うん」


 恵那斗を引き合いに出すのはズルいと思うんですよ。

 私が何も言い返せなくなったのを見たゆあちーは、満足したように「うんうん」と頷きました。

 まるで渾身の一作を作り上げた職人のような顔つきです。私を何だと思っているんですか。


 というか、衣服を見るのに集中していたせいでご飯を食べるのを忘れていました。


「……あの、そろそろご飯にしないかな」

「ん?あーっ、そう言えばご飯食べるの忘れたね!あははっ」

「ゆあちー、楽しそうに服を見てたもんね……まあ、ありがとうね」

「うんっ。ことちーを可愛くできたから満足っ。ことちーの彼氏さんに早く見せてあげたいなあ……」

「もうっ……あ、ちょっと待って。恵那斗から連絡来た」


 ゆあちーと駄弁っている最中でした。

 スマホから通知音が響いたことに気付き、スマホを取り出します。ちょっとフリルが邪魔で身体を動かしにくいですけど。

 それから、手慣れた操作で恵那斗とのチャット画面を開きました。

 

 

[ena]


[今どこですか]14:21

  [今はゆあちーに服選んでもらってたよ]14:22

[ショッピングモール?]14:22

  [そう。1階のフードコート前]14:23

[じゃあ私もそっちに行きます

 15分ほど掛かると思います]14:24

  [分かった]14:24



「恵那斗、こっちに来るって」

「あっ、そうなの?じゃあ彼氏さんが来るまで待ってよっか」


 私がそう告げると、ゆあちーはひとつ頷いたあと壁際に身を寄せました。

 なんだか、以前のラフな衣装と大きく異なる姿なので……かなり、不思議な感じがします。


 恵那斗は地雷系ファッションに身を包んだ私を見て、どんなリアクションをするのでしょう。楽しみな反面、ちょっぴり緊張しますね。


 

 しばらく待っていると、恵那斗が颯爽と現れました。

 俳優かと思うようなルックスなので、時折周りの女性が恵那斗へと視線を送っています。ちょっと、私の恵那斗ですよ?


「あっ、恵那斗」

「……ん?あっ、え?」


 恵那斗は私に気付くことなく通り過ぎようとしました。

 なので咄嗟に呼びかけたのですが、彼は困惑した表情で硬直。目を丸くしています。

 それからじっと私の全身を見た後、どこか意見を求めるようにゆあちーに視線を送りました。


 ゆあちーは胸を反らし、したり顔で言い放ちました。

 

「ことちー美少女化計画だよっ!」

「……驚いた。ただでさえ可愛い琴が、ここまで可愛くなるなんて……」

「ふふんっ。私のセンスに脱帽したかっ、彼氏さん的にはどう?」

「100点なんて物差しで測れないわ。もう、これは国宝よ。土屋さん……あなた天才だわ。滾るわね」

「でしょ?」


 なんですか滾るって。恵那斗は何を言っているんですか。

 

 二人は地雷系ファッションに身を包んだ私を高く評価し、和気あいあいとしています。

 

「……うう。恥ずかしいですよ……」

 

 ですが当の本人としてはすごく恥ずかしいです!

 私自身も“アイテムボックス”の中に格納されてしまいたい気分です。


 というか恵那斗も、私が47歳男性ということを忘れてないですよね!?不安なのですが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ