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第177話 可愛さレベルカンスト

「麻衣ちゃん、これ無理じゃない? 私倒せないよ」


 メタルスライムに対して、全く攻撃が通る気配がありません。私のステータスでは攻略が難しいのでしょうか?

 半ばお手上げかと思い、つい弱音を吐いてしまいました。


 私の言葉に対し、麻衣ちゃんは「まあ、そう思うよねぇ」と頷きます。

 その間にも歩くのは止めなかったのですが、他の魔物とは一切邂逅しませんね。琴男が1人で雑魚敵を掃討してくれているようです。仕事が早い。さすが大台越えです。


 麻衣ちゃんはそれから、冒険者証を取り出しました。


「琴ちゃん、1回ステータス見せて?」

「ん? うんっ」


 なにか研修に関係することでしょうか。

 私は麻衣ちゃんからその冒険者証を受取り、久々の合言葉を唱えました。

 

 ……普段、あんまりステータスを見ないだけです。めんどくさいんですもん。

 ズボラとか言わないでください。むーっ。

 

「ステータス・オープンっ」


 すると“幻惑魔法”によって構築された魔法によって、私の眼前にステータス画面が表示されます。相も変わらず便利な技術ですね。

 麻衣ちゃんの名義で表示されちゃっているので、そこは省略します。


 

Lv:24

HP:188/188

MP:362/364

物理攻撃:63

物理防御:87

魔法攻撃:294

魔法防御:213

身体加速:61


 うん。

 ここまで偏るか? というレベルで魔法特化のステータスです。物理攻撃に関しては貧弱です。ゴーレムの攻撃でも受けようものならワンパンですね。

 紙装甲高火力の琴ちゃんです。

 

 ”アイテムボックス”を2回使った分のMPはちゃんと消費されていますね。


 ステータス画面を麻衣ちゃんに送信した後、冒険者証を返却しました。

 麻衣ちゃんは「ありがとう」と受け取ります。それから、片付けるでもなく自身も合言葉を唱えました。


「私も表示させるねぇ。ステータス・オープン」


 恐らく、その言葉と同時に眼前には麻衣ちゃんにのみステータスが表示されているはずです。それを証明するように手慣れた操作で指を動かし、私へとステータス画面の共有を行いました。


 【花宮 麻衣】

Lv:76

HP:433/433

MP:814/814

物理攻撃:111

物理防御:204

魔法攻撃:824

魔法防御:948

身体加速:106


 相も変わらずレベルの高い冒険者です。私の上位互換みたいなステータスしていますね。私の存在意義が薄れてしまいます、ううん悲しい。

 これでも元は私の後輩なんですよ?いつの間にか立場が逆転してます。


 まあ、ただの自慢という訳ではないのでしょう。ひとまず麻衣ちゃんの話を聞いてみることにしますか。


「私のステータスも、琴ちゃんと似たように魔法特化のステータスだよねぇ」

「うん、物理攻撃が低くて魔法攻撃が高い」

「そうそう。多分、現時点の恵那斗さんにも物理攻撃は負けているはず」


 麻衣ちゃんはそう言って、ちらりと恵那斗に視線を送りました。

 彼は苦笑を漏らしながらも首を横に振ります。


「私は物理で戦えるステータス、と言ってもバランス型よ」


 恵那斗は降参するように両手を上げました。

 確かに考えてみれば、恵那斗は物理攻撃も魔法もどちらも扱えますもんね。サポートとしての側面が強いようには見えます。

 “障壁魔法”にはお世話になっています。んふふ。

 

 そんな彼の言葉に対し、麻衣ちゃんは真剣な顔を作りました。

 静かに口を開き、言葉を紡ぎます。

 

「ここで疑問に思って欲しいのは“物理攻撃が低い冒険者は、メタルスライムを倒すことが出来ないのか?”ということです」

「……なるほどね」

「物理攻撃が低い冒険者がメタルスライムを倒せないというのなら、イナリちゃんを連れてきた意味がなくなります」

「確かに。イナリちゃんは特にレベルが低いものね」


 恵那斗は次にイナリちゃんへと視線を向けました。

 話題の中心となったイナリちゃんは、露骨に元気がなさそうに項垂れます。狐耳と尻尾が萎れました。


「ぬぅ……儂はレベル上げが出来んとか、じゃないよのぅ……?」


 上目づかいで不安そうにイナリちゃんは麻衣ちゃんへと視線を合わせます。つぶらな瞳で、縋るように覗き込む幼子の顔というのは破壊力が抜群です。

 可愛いなんて言葉では表現できません。その無垢な顔が麻衣ちゃんの表情を悲痛に歪ませます。


「っ……だ、大丈夫ですよぉっ! 今から、攻略方法について教えますのでっ!」

「本当かの……?」

「ほ、本当ですっ! お任せくださいっ」

「……じゃあ、頼むのぅ」


 イナリちゃんはまだ完全に信じ切れていないのでしょう。不安げな表情を隠すことが出来ず、麻衣ちゃんのローブの裾をきゅっと摘まみました。


「……ぬぅ」

「……っ……琴ちゃん、とんでもない人材を引き入れましたねぇ……」


 麻衣ちゃんの顔面が紅潮しました。表情には緊張とか焦燥とかニヤけとか、色んな感情が入り混じったものが反映されています。

 それからイナリちゃんから逃げるようにそっぽを向きました。


「っ、じゃ、じゃあ見せますのでっ! 次にメタルスライムと邂逅した時に実践しますねぇっ……!」

「うむ、頼む……。麻衣ちゃんや……」

「っ~~~~!!!!」


 イナリちゃんが不安げな顔を作る度、どうやら麻衣ちゃんの母性がくすぐられているようです。


 どうですか、うちの熟練の冒険者は。

 現時点でレベル7とかなのですが、そんな低レベルなどものともしない破壊力を備えているんですよ。可愛さで言えばレベルカンストです。


 イナリちゃんはまだ自身の身体に対する変化に対し、まだ十分に適応できていないのでしょうね。

 なんだか一周回って子供らしくなっています。中身64歳のおじいちゃんとは分かっていても、愛くるしい見た目をしているというのは真実ですから。


 

 しばらく進んでいると、再びメタルスライムと邂逅しました。


「ピィッ」

「出てきましたね。ひとまず時間を止めて、実践に使いましょう」


 麻衣ちゃんは手慣れた様子で”アイテムボックス”を発動させ、その中からドラゴンの骨を削って作り出した魔法杖を取り出しました。

 一般の市場ではなかなか流通することのない、高級ブランドの魔法杖です。さすが全日本冒険者協会に所属する一流の冒険者です。


 それから麻衣ちゃんは、そんな魔法杖に付属した魔玉をメタルスライムへと向けました。

 メタルスライムは麻衣ちゃんが魔法を発動させようとしていることに気付き、逃げ出そうとしたようですが時すでに遅し。


「とりあえず、まずはこのメタルスライムを使って説明を始めますね」

「ピ……」


 可愛く鳴いたメタルスライムですが、それが最期に発した鳴き声となりました。


 杖先から放たれる、青色の光。

 鋭く解き放たれた光は大気を貫きながら、一直線にメタルスライムを拘束。対象を中心として、まるで写真のように空間を切り取ってしまいました。

 瞬く間に時間を止められ、声帯すらロクに動かせなくなったようです。


 麻衣ちゃんが発動させた“時間魔法”によって拘束されたメタルスライムをひょいと持ち上げた麻衣ちゃんは、私達へとのんびりと持ってきました。

 それからぽいっと私達の輪の中心に放り投げます。


 ごろんと転がった“時間魔法”によって止められたメタルスライム。

 “時間魔法”と言えばやはり、麻衣ちゃんお得意の魔法ですね。アンチエイジングに使っているだけのことは「琴ちゃん?」……なんでもないです。

 

 実年齢について触れるのはタブーです。よし。



 さて。

 身動き一つとれなくなったメタルスライムへの、リンチの時間ですね。私達呪い三人衆に見つかったのが運の尽きです。

 文字通り“経験”にさせてもらいましょう。

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>相も変わらずレベルの高い冒険者です。私の上位互換みたいなステータスしていますね。私の存在意義が薄れてしまいます、ううん悲しい。  今の成長率で同レベルまで追い付いたら、多分上回る事が簡単に予測でき…
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