第158話 【おまけ】魔法銃:後編
「警部、突入許可を要請します」
「ふむ。ゴブリンに囲まれていてはやむを得まい、突入を許可しよう」
「ありがとうございます。私の魔法の力、ことちー……じゃないや、田中さんに存分に見せつけてやりましょう」
「うむ、期待して……ぷっ、あははっ……ごめん無理笑っちゃう」
私とゆあちーは、ゴブリンの群れがこちらに気付いていないのを良いことに、茶番を繰り広げて遊んでいました。
背中合わせで魔法銃を上に構えてカッコを付けています。ハイレディーと呼ばれる、味方に流れ弾が行かないようにする為の安全管理です。トリガーにもロックは掛けてますよ。
悪ふざけで怪我するのが一番たち悪いですから。
そんなやりとりを遠巻きに見ていたイナリちゃんは、呆れたようにため息を付いていました。
「お前さんらは仕事せんか」
「や、ごめんなさい。ついテンション上がってしまって」
「全く……特に琴ちゃんはいい年した社会人であろうに」
「うぐっ……!!」
イナリちゃんは魔法銃を腰に巻いたホルスターにしまい込んでいます。
小太刀と言い、拳銃と言い、彼女の帯にはやたらと装備が付けられていますね。
今、私達が仕事を行っているのは塔型ダンジョンです。床一面には大理石が敷き詰められているようなところです。崩落した瓦礫が通路の仕切り代わりとなっていました。
いつもお世話になっております。
さて、と言うわけで例の如く、物陰の先にはゴブリン達が潜んでいますね。相も変わらずぎぃぎぃと鳴き声を交わし合っています。仕留め甲斐がありますね。良い断末魔をあげてくれそうです。
魔法銃の使い勝手は分かりませんが、とりあえずこういうのは実践に限りますね。
という訳で魔法銃を上に構えたまま、先に前に出ようとしたのですが。
「琴ちゃんに基準を狂わされると困るわい。儂が先に出るぞ」
イナリちゃんは小太刀を構えたまま、先陣を切りました。
視界の奥に居るのは、3体のゴブリンです。本来なら1人1体を担当するのが筋というものですが。
まあ、今回は通常個体ですし、あんまり苦労はしなさそうですね。琴ちゃんお得意の分析能力です。
「イナリちゃん、サポートは要りますか?」
「黙って見届けてくれるのが最大のサポートじゃわい。必要なら指示するでの」
「む……!」
「儂も正直な、興味はあるんじゃ。常に思考というものはアップグレードせねばならんのでな」
随分と失礼なことを言い放った後、イナリちゃんは颯爽と物陰から駆け出しました。狐耳と尻尾を揺らしながら駆け抜ける姿は、熟練の猛者のそれには正直見えません。
したたっ、とかそんな効果音が似合いそうです。
軽快なステップで駆け抜けるイナリちゃんは、そのままホルスターから魔法銃を引き抜きました。銃口を素早く合わせた彼女は、淡々と詠唱します。
銃口の向ける先は、突然の敵襲にまだ姿勢を整えることの出来ていないゴブリン共のうち1体です。
「"身体強化"っ」
イナリちゃんが銃弾に付与する魔法として選択したのは、攻撃魔法では無く、支援魔法の類である”身体強化”でした。
3体並んだ内の左端に居たゴブリン目がけて放たれた"身体強化"を付与した弾丸。それは、ゴブリンの右肩を撃ち抜きます。
「ギッ……!」
「ほれ、しばし休んでおれ。お前さんは最後に相手してやるでの」
”身体強化”を付与した弾丸。それをモロに受けたゴブリンは、苦悶の声を上げながら蹲ってしまいました。まるで傷口の激痛に耐えられないように、ついには地面に倒れ伏してのたうち回っています。
……"身体強化"を受けたというのに、一体何故。ゴブリンはバフ効果を受けるどころか、逆に苦しんでいるのでしょう。
その答えは、また後ほどイナリちゃん本人から教えて貰うことにしましょうか。
イナリちゃんは苦悶にのたうち回るゴブリンを置き去りにして、ひょいと身を翻しました。返す動きに、グラデーションを帯びた金髪の髪と尻尾が揺れます。
地面を蹴り上げながら、軽く身体を捻ります。そのまま魔法銃を構えた左手で、近くに居たゴブリンのこめかみを叩きました。
「ギィッ」
「ほれ。お前さんらは相も変わらず未熟じゃの」
鈍器と化した魔法銃の殴打によって怯んだゴブリンの元へと、イナリちゃんは素早く腰に携えた鞘から抜いた小太刀の斬撃を浴びせました。
刃の軌跡は、ゴブリンの喉元に重なります。
「カッ……」
そんな気道から空気が漏れる音と共に零れ散る鮮血。その血溜まりの中に倒れ伏したゴブリンは、もう二度と動くことはありませんでした。
1体は行動不能、もう1体は即座にその命を奪われました。
瞬く間に生じた現象を前に、残った無傷のゴブリンは呆然とするほかありません。
まあ当然、そんなゴブリンを前にしてイナリちゃんは慈悲など与えるはずもないのですが。
左手に持った魔法銃の銃口をちらつかせると、対峙したゴブリンは引きつった笑みを浮かべました。
「……ギ……」
「情けない。情けないのぅ……良いか、小童よ。お前さんらは運が悪かったのじゃ」
小柄な狐っ娘であるイナリちゃん。彼女からあふれ出す気迫に耐え切れなかったのでしょう。
「……ギィッ、ギィ……!」
ゴブリンはみっともなく地面を這いつくばるように逃げようとしていました。
そんなゴブリンの体躯へと、イナリちゃんは銃口の照準を合わせます。
「ぬぅ、逃げようというのか。じゃが、儂がそんなこと許すはずが無かろうて」
そう最後に言い放つと、イナリちゃんは無言で”治癒魔法”を付属させた射撃を放ちます。黄緑色の光を纏っていたので、すぐに分かりました。
まあイナリちゃんお得意の魔法ですからね。やるとは思っていました。
「……ギィ……?」
黄緑色の光がゴブリンの胸部に吸い込まれたかと思うと、突然ゴブリンは両手を胸元にあてがいました。
なまくらの短剣が地面に落ちて、がくりと膝から崩れ落ちます。
どうやら、心臓目がけて"治癒魔法"を打ち込んだようです。心臓周辺に増殖していく疑似細胞が、確実に心臓を壊していきます。
「終わりじゃ」
イナリちゃんは、今にも絶命せんとするゴブリンを見届けすらしませんでした。顔面から崩れ落ちるゴブリンを背にして、その場を去ります。
絵面だけ見ればハードボイルドに見えないこともありません。
そして、最後に対峙するのは”身体強化”を付与されたはずのゴブリンです。
冷ややかな目でゴブリンを見やりながら、イナリちゃんは静かに解説を始めました。
「"身体強化"はの、言わば筋密度を増やす魔法なのじゃよ」
「……ギィ」
イナリちゃんの言葉は決して通じていないでしょう。残ったゴブリンは、自らよりも身長の低い狐っ娘を静かに見据えます。
まるで、その瞳は命乞いでもするかのようですね。
ですが、イナリちゃんはそんな視線にも動じません。
淡々と解説を続けます。
「創作物でよくあるじゃろう。筋密度が常人の何倍も、というものが。それを意図的に生み出す魔法が“身体強化”という訳じゃな」
「ギ……」
「そんな魔法を銃弾で一点に集中させればどうなるか……まあ、おおよそ予想は付いておった。つまり、こういうことじゃよ……"身体強化"」
そう告げたイナリちゃんは、再び”身体強化”を付与した銃弾を、今度はゴブリンの左肩へと解き放ちました。
鬼ですか。
血肉を抉りながら、筋肉を強く引きちぎらんとする"身体強化"。
想像を絶する両肩の激痛に、ゴブリンは絶望に近しい悲鳴を上げました。
「ギィッ、アアアアアア!!!!ガッ、ア、ウ、ギァァアァアアアア!!!!」
「……うるさいの。他の魔物が来てしまうじゃろうが」
「ギ」
断末魔を上げたゴブリンに対し、何の躊躇も無くイナリちゃんは小太刀で首筋を切り裂きました。
ごろんと転がったゴブリンの頭部。それを見届けた後、イナリちゃんは小太刀に付属した血液を、ゴブリンの腰蓑で拭います。
……イナリちゃんも、大概容赦ないですね。私のことを言えないですよ?
戦闘モードを解除したイナリちゃんは「ふう」と空に目がけて息を吐きました。
「琴ちゃんや。もしかすると増援が来るかもしれん、回収するならさっさとせい」
「あっ、はい」
あのっ、イナリちゃんがそのような状況を作ったんですけどね!?
……という心の中の突っ込みは余所に置いておいて、”アイテムボックス”にいつもの如く、ゴブリンの死骸を格納しました。
何はともあれ、”ゴブリンショット”に用いることの出来る弾数を確保できたので、私としては嬉しいです。
琴ちゃん自体も”アイテムボックス”という銃身を持っているんですよ?えへへ。
銃弾はゴブリンです。倫理観が終わっていることだけがデメリットの魔法銃です。
☆
「ぶちかませっ、“炎弾”っ!」
「きゅ……!」
ゆあちーが放った“炎弾”を付与した銃弾は、一直線にマーダーラビットの眉間へと直撃。可愛らしい悲鳴を上げながら、マーダーラビットはそのまま力尽きて動かなくなりました。仕事とはいえ、ちょっとだけ心が痛みますね。ごめんねうさちゃん。
魔法銃の性能を確認しながら、着々とダンジョン攻略を進めていく私達。
ゆあちーは魔法銃の銃身に視線を落としながら、正直な感想を漏らしました。
「んー……私は正直、戦闘スタイルに合わないかもな。大槌からの切り替えが難しいかも……」
「いつも掌から“炎弾”出してるもんね」
私がそうゆあちーの戦闘スタイルを思い出しながら、そう賛同します。ゆあちーは私の返事に「うん」と頷きました。
「なんというか、“魔法銃に使われている感じ”が強いな。しばらく使ってみると意見が変わるかもしれないけど……今の私には合わないかな」
「まあ、それもまた1つの気付きだもんね」
「貸してもらってるのにケチ付けて申し訳ないけどなあ」
ゆあちーは魔法銃をホルスターに戻しながら、そう苦笑を重ねて感想を漏らしました。
私も魔法銃を使いながら、適宜ゴブリンを撃ち抜いたりしているのですが……正直、予想以上に予想以下でした。
「……なんか、楽しくない」
「ことちーは武器を何だと思っているの」
「ロマンが足りない……」
ハッキリ言って、魔法杖を使っている時ほどのときめきを感じません。
というのもですね、”アイテムボックス”を付与した弾丸を放ってみたんですよ。
「ギィ」
あ、ちょうど目の前にはぐれゴブリンが居るので再度実践するんですけど。不安そうにあちこち見渡してるので通常個体ですね。背筋が伸びてません。
「”アイテムボックス”を付与して、どーんっ」
「お前さんは”アイテムボックス”の扱いを間違えておると思うぞ」
「イナリちゃんに言われたくないですよ?」
そんな雑談を交わしながらも解き放たれた、”アイテムボックス”を付与した銃弾。それはゴブリンのこめかみに着弾したかと思うと、血液を撒き散らしながら倒れました。
不随意となった電気信号によって、ゴブリンの全身がびくりと跳ねます。それからしばらくして、二度と動くことは無くなりました。
「うーん……」
「明らかにつまらなさそうな顔をするでない」
「楽しくない……」
……なんというか、普通なんですよね。
“アイテムボックス”を付与した感がありません。
何かしらの作用はしているのでしょうが、傍から見たらただの銃弾です。目に見えた変化がないのは楽しくないです。ぶっちゃけ不服です。
こう、“アイテムボックス”に速攻で格納でもされれば楽しかったのですが。
「……うーん、もう少し面白いものが見れると思っていたんですけどねえ。魔玉と同じ作用ですし」
「儂としてはのぅ……お主の暴走を抑えられるというだけでも、魔法銃を使わせる価値はあると思うがの」
「失礼ですねっ!?イナリちゃんも大概残酷な使い方してますよっ」
「ふんっ。お主よりかは幾分かマシじゃ」
「ううう……」
「儂は順当な使い方じゃと思うがの」
あまりに酷い言い草だと思います。
むっとしたのでイナリちゃんを睨んだはいいのですが、彼女はどこ吹く風と言った様子です。
「つーん」と言った顔で尻尾を揺らしながら、そっぽを向いてしまいました。
うーん、魔法杖の要素を組み込んだ魔法銃なのですから、もう少し面白い使い方が出来るものと思っていたのですが。
魔法杖と同じ要素。
……魔法。
——“琴ちゃん魔法”。
「あっっっっっ!!!!」
「ぬぅ!?何じゃ!?」
「そうじゃん!“琴ちゃん魔法”!!」
「……いかん。由愛ちゃん、琴ちゃんを止めよっ!早う連れ帰るぞ!!」
そうなんですよ、なんで今まで忘れていたんでしょう!
あるじゃないですか、使って楽しい魔法が!!
この魔法を魔法銃に付与すれば一体どうなるのか、ちょっと興味はあります。
ちょうど良い機会ですし、どうせならやってみましょう!!
「ことちー、ちょっと大人しくしてよっか!」
嫌な予感を感じ取ったゆあちーは、すぐに私を羽交い絞めにしようとしてきました。
ですが読めていますよ!!
「“琴ちゃんブースト”!!」
「あっ!?」
私は“魔素放出”を両脚に纏わせて、颯爽とゆあちーの拘束から逃れました。
だってちょうど良い機会なんですよっ。どうせならやらなければ損というものです。
さて、ダンジョン攻略も大詰め。
今現在、私達は1階層の出入り口付近にいます。つまり、いつでも帰ろうと思えば帰れる状態です。
なのでもう、これはやるしかありませんよね!!
これの為ならクソまずいポーションを飲むことだって受け入れます。
だって今回きりかもしれませんから!!
再び行動を制限されては困るので、すぐに捉えられない範囲まで逃げました。
後はイナリちゃんとゆあちーが巻き込まれてはいけないので、2人から背を向ける形を取ります。
「2人とも、下がっていてください。琴ちゃんは本気です」
「そんなことに本気にならんでよいっ!」
イナリちゃんの心からのツッコミが漏れ出します。64歳男性、今日もツッコミが元気です。
ですが、もはや私の暴走は止められないと悟ったのでしょう。
イナリちゃんはゆあちーを連れて「先に出るぞ」と声をかけていました。懸命です。
さて、ダンジョン攻略の締めに解き放つのはやっぱりこれですよね。
今回は“炎弾”を50発くらい盛っちゃいましょう!MPならいっぱいありますし!
行きますよっ!
“琴ちゃん魔法シリーズ”第一弾、アレンジ。
「“琴ちゃんキャノンver.魔法銃”っっっっ!!!!」
「ことちーそれ好きだね!?」
ちょっとテンションが上がったので、そう嬉々として叫びました。同時に、魔法銃のトリガーを強く引きます。
すると、魔法銃から轟音が響きました。聞こえちゃいけない音が辺り一帯に轟きます。
「わっ!?」
許容量を超えた威力に、魔法銃の銃口が割れました。
欠片がこっちに飛んでこなくて良かったです。
やばい。
冷や汗が止まりません。
支給品を壊しちゃいました。
そんな高火力を付属した銃弾は、真紅の火炎を纏いながら遠くまで飛んでいきます。大気を吸い込みつつも、徐々に遠ざかっていく“琴ちゃんキャノンver.魔法銃”。
やがて私達の視界から消えたそれは、突如として強烈な光を放ちました。
まず、視界に映し出されたのは激しい灼熱です。爆炎が巻き起こり、土煙が天井付近まで舞い上がりました。
衝撃波が近づいてくるのが直感的に分かります。
「おわーっ!!」
「阿呆め!早う身を隠せ!」
「ああもうっ、こうなるのは予想できてたよ!!」
わたわたと騒がしく悲鳴を上げる私達。
「とりゃっ!避難場所っ!!」
ゆあちーは咄嗟に顕現させた大槌で地面を叩いたかと思うと、床材として用いられている大理石をめくれ上がらせました。即席のバリケードの完成です。
私の対処に慣れていますね、ゆあちー。さすがです。
その中に逃げ込んだ私達は、頭を低くして衝撃に備えました。
間を置かずして、衝撃波が私達にも襲い掛かります。
「——!!」
轟音にかき消され、悲鳴さえ届きません。
土煙が私達の隣を通り抜けていくのが分かります。ダンジョン内がことごとく瓦礫と化していくのが直感的に分かります。
暴力の限りを尽くす“琴ちゃんキャノン”は、瞬く間に1階層を破壊してしまいました。
……魔法銃を用いた、“琴ちゃんキャノン”。その威力は絶大でした。
ただでさえ火力の高い魔法に、更に速度を加えたのですから。
正しく、その火力はミサイルともいうべきものでした。
土煙が晴れ上がった中に、もはや元の光景など見出すことは出来ませんでした。
床材として使用されていたはずの大理石は姿を消し、その下に隠されていたであろう土が露出していました。大理石はもはや欠片しか残っていません。
……なんというか、このパターンちょくちょくありますね。誰のせいでしょう。えへへ。
やがて、ことごとくが破壊しつくされた1階層を見やりながら、イナリちゃんは静かに呟きました。
「……琴ちゃんや」
「はい?」
「お前さんに魔法銃は、もう二度と渡さん方が良いの」
「えーっ!?」
「支給品を壊しおって……早う帰るぞ」
「はぁい……」
んー、やっぱり私には魔法杖の方が合っているようです。
……時間が経ってから、徐々に申し訳なさが込み上げてきました。
前園さんに謝らないといけませんね。
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「……魔法に耐え切れず、壊れたんですか……へ?壊れるの?それ」
「えっと……ごめんなさい」
ダンジョンの外で律義に待ってくれていた、取引先の職員である前園さんはその報告を受けて目を丸くしました。
さすがに罪悪感が込み上げます。“琴ちゃんキャノン”の火力には耐えきれませんでした。
しばらく前園さんは「どう報告しようかな」と腕を組みつつ悩んでいましたが、やがて苦笑を漏らします。
それから、私の頭を優しく撫でました。
「ん?」
「ごめんなさい、魔法に耐えられないもの渡しちゃって。このサンプルは持ち帰らせてもらいます」
「こ、こちらこそごめんなさい……」
「ううん、大丈夫ですよ。やっぱり実戦でしか見えないものもありますから、有意義なデータがとれそうです」
前園さんは、そう言って最後にニコリと微笑みました。まるで女神のような人ですね。支給品を壊して許してくれるなんて、なんと慈悲深い方でしょう。私のパーティに来ませんか。許されたいんですよ私は!
最後に私達から魔法銃を回収した彼女は、「それでは失礼します」と頭を下げて帰っていきました。
恐らく今回のデータを持ち帰って、魔法銃の改善案でも出すのでしょう。
そんな彼女の後ろ姿を見送った私達3人。
私の隣に立った変装モードに戻ったイナリちゃんは、呆れたように腰に手を当てます。
「琴ちゃんの火力がおかしいだけじゃ。あの職員さんは真面目じゃの……」
「私は大人しく魔法杖を使います……」
「うむ、それが良い。失敗でしか得られん気付きもあるからの……儂らも帰るぞ。報告書をまた作成せねばならん」
「うぇー……また書類仕事……」
「仕方ないじゃろうが阿呆。取引先との記録はきちんと残さねばの」
「はぁい……」
どうにも耳の痛い話ばかり続きますが、さすがに他の企業様が関わっている以上ちゃんとしなければいけませんね。
結論としては、琴ちゃんに魔法銃は不向きでした。
まあ実戦を補助する目的では確かに役立つんですけど、ロマンが足りないです。
ですが、イナリちゃんは非常に魔法銃を気に入ったようですね。
満足げな笑みを浮かべつつ、私の背中を軽く小突いてきました。ちょっとテンションが高くて可愛いです。
「ただ、琴ちゃんの行動を抑制できるという点では、儂は魔法銃というのは優秀だったと思うがのぅ」
「酷くないですか!?」
「お前さんはむしろ自制せぇ。せめて魔石を破壊するでない。収入源じゃぞ」
「うぐっ」
イナリちゃんはいつも正論ばかり突いてくるので耳が痛いです。
そんな中、ゆあちーは楽しそうな笑顔を浮かべて私達に提案してきました。
「ね、帰りにゲーセン寄ってこ。ちょっとガンシューティングしてみたくなっちゃった」
「えっ、面白そう!賛成だよゆあちーっ!」
「ついでに皆でプリクラ撮ろっ、ね?」
「うんっ!イナリちゃんも行くよっ」
ゆあちーも大概無邪気ですよね。笑顔が眩しいです。
イナリちゃんはボソッと私に向けて「47歳男性よの?お前さんは……」とぼやいていましたが。良いんですよ、こういうガス抜きだってたまには大事ですっ。




