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第119話 ペット不可

 介護扱いされた金山さんは不服そうに尻尾をブンブンと振り回し続けます。感情が動きに現れているのは面白いですね。

 そんな金山さんをゆあちーが抱きかかえてたしなめます。

 

「おじいちゃん、暴れないの」

「む、ぬぅ……でも、のぅ……」

「私もお母さん居るから難しいなー……誰か、世話できそうな人居ない?」

「儂はペットか何かか……?」


 ほとんど蚊帳の外である三上パパも、難しい顔をして首を横に振りました。


「俺もなァ、娘がたまにこっちに顔出すからよォ……つーかよ」

「ん?」


 パパは私と恵那斗に視線を送りました。

 大体何を言おうとしているのか、直感的に理解できるのが嫌なところですが。


「田中夫妻。お前んところで預かれば良いんじゃねェか?」

「……あー……やっぱり、そうなります……?」

「琴きゅんも恵那斗君も似たモン同士だろ。ちょうど良いとは思うがなァ?」

「……そうしたいのは、やまやまなんですけどね」

 

 在宅介護……という扱いになるのでしょうか。これ。

 ……別に、金山さんを預かるのが嫌という訳じゃありませんよ?


 大きな問題があるんです。

 ものすごく単純な問題が。

 

 恵那斗もその問題は予想できているでしょうが、一応確認を取ってみます。


「……恵那斗。うちのマンションって、ペットいけたっけ?」

「うーん。駄目ね」

「だよねぇ……」


 そうなんです。

 田中夫妻が借りているマンションは、ペット不可なんです。

 狐耳幼女がペットという条件に含まれるか分かりませんが、戸籍の獲得すら微妙なので……。


 私達の話を聞いていた金山さんは尻尾をブンブンと振り回して怒ってきます。

 

「ペットではないがのぅ!皆して失礼じゃ!!こんな体でなければ1人で生活くらいできるんじゃっ」


 確かに、今の金山さんが外に出づらいだけであって、生活能力が衰えた訳ではないんですよね。

 外見的問題が、ダイレクトに突き刺さるのは可哀想ですね。

 私達よりも致命的です。

 

 なので誰かが、金山さんの生活をサポートできる状況になればいいだけです。


 ……ということは。

 

「……ん、ちょっと待ってください。金山さん」

「ぬぅ!なんじゃ、まだ儂をおちょくるつもりかっ」

「違いますよっ」

「……ぬ?」


 私が真剣な表情を作っていることに気付いたのでしょう。金山さんは振り回していた尻尾を納めて、じっと私を見据えてきます。

 そんな金山さんに視線を合わせて、私は疑問を投げかけました。


「金山さんの家って、どれくらいの広さあります?」

「ぬぅ……異災前に買った1軒屋でのぅ。2階建てなんじゃが……」

「なるほど、ありがとうございます。じゃあ行けそうかな」

「ぬ?もしや、お前さん……まさかとは思うが」


 私の質問の意図が理解できたのでしょうね。

 金山さんは引きつった笑みを浮かべています。

 ですが、金山さんもそうしなければ問題を解決できないことは分かっているのでしょう。その瞳が不安に揺れています。ゆあちーほどではありませんが撫でまわしたい気分です。

 

 という訳で、私は恵那斗へと。そして、この場にいる全員を見渡しました。


「それなら……私達、田中夫妻が金山さんの家に引っ越せば解決しますね」

「ぬ、ぬぅ……」

「恵那斗、それでいい?」


 金山さんは反論できないことに気付いたのでしょう。

 へにゃりと尻尾をしおれさせて、流されるがままとなってしまいました。


 私の意見に、恵那斗も強く頷いて賛同します。


「ええ。それで構わないわ。また、引っ越しの段取りでもしようかしら……金山さんも、それで問題ないわね?」

「う、うぅむ……まさかこのようなことになろうとはのぅ……」


 金山さんはどこか不本意そうでしたが、否定する理由も見つからなかったようです。

 「……よろしく頼む」と頷いてくれました。良かった。



 そして、最後にもう一つだけ。

 どうでも良いと言えばどうでも良いんですけど、私にとっては大事な問題が残っています。私にとっては。


「じゃあ、金山さん。ついでになんですけどね」

「ぬ?まだ何か残っているのか?」

「その姿での呼び方、考えましょうか」

「……嫌じゃぞ。儂は金山 米治じゃ」


 金山さんはふいっと顔を反らしていしまいました。

 だってですよ?


 

 田中 琴男は田中 琴に。

 田中 恵那は田中 恵那斗に。


 

 それぞれ、今の姿で名前を変えているんですよ?

 おじいちゃんネームもそれはそれで楽しいですけど、どうせなら姿に似合った名前を考えたいです。


 ちなみにそう提案すると、ゆあちーは乗り気になったようですね。

 一番乗りで提案してくれました。


「じゃあ、じゃあ!狐ちゃんはどうかなっ!」

「由愛ちゃん乗り切りよのぅ!?」

「えーっ、だってこんな愛くるしい見た目してるのに。おじいちゃん、勿体ないよー」

「儂はなりたくてなったのではないわい。ええいっ、離れんか!」


 なんというか、ゆあちーと金山さんの組み合わせ、凄くしっくりきます。同じパーティメンバーということもあるのでしょうが……、噛み合っていますね。

 金山さんは不本意そうにジタバタしていますが。ゆあちーが子供をあやすお姉さんになってます。


 私も案は考えていますが、まずは他の人から意見を聞いてみましょう。


 

「や、別に金山ちゃんで良いだろうがァ」

「パパ、面白くないですよ」

「大喜利大会やってんじゃねェぞ……」


 三上パパはネーミングセンスがないですね。面白くありません。

 ばっさり切り捨てると、パパは不貞腐れてしまいました。全くもう、パパは扱いが難しいですね。


 

「……キンキツネ、とか?」

「もうちょっとひと捻り欲しいかも」

「ひと捻りって……琴ちゃん……」


 麻衣ちゃんの呼び名も面白そうですけどね。金山さんという名字と重なっていますし。

 ですが、私としてはもう少ししっくりくる名前があるように思います。


 次に、私は恵那斗に視線を送りました。


「恵那斗は何か思いつく?」

「私たちと同じように“米ちゃん”とか“治ちゃん”とかで良くないかしら」

「んー……」

「なんで不服そうなの……じゃあ、琴は何か思いついているのかしら?」

「おっ、私の案を聞く?聞いちゃう?」


 恵那斗が促してくれるのなら仕方ありません。

 前振りを期待していた訳じゃありませんからね??ふふんっ。



 あっ、金山さんが不安そうにこっちを見ています。

 大丈夫ですよ、ちゃんと金山さんに似合った命名をしてあげましょうっ。



「のぅ、琴ちゃんや。変な名前を考えている訳ではないよのぅ?」

「イナリちゃん」

「ぬ?」

「私はね、イナリちゃんって名前が良いんじゃないかなーって」



 全員が「イナリちゃん?」みたいな顔をしてこっちを見てきました。

 代表して、パパが私に理由を聞いてきます。


「琴きゅん、どーせよォ……由来聞いて欲しいんだろ?」

「わかってるじゃないですかっ」


 うんうん、やっぱり気になりますよね。

 なのでもちろん、ちゃんと説明しますよっ。


「だって、名前で考えてみよっか。“金”と“米”の漢字から稲荷寿司が連想できるでしょ?で、金山さんのこの見た目。やっぱり狐と言えば稲荷神社だよね。神社と言えばやっぱり山奥にあるイメージだし。そして、金山さんは“治癒魔法”を得意としてる。だから、“金山 米治”って名前の漢字が何一つ無駄にならないと思うんだよね」


 ふふんっ。ここで私の案を説明しておきましょう。


 金山 米治、という名前の漢字を分解して考えてみますね。


 まず「金」と「米」という漢字。この二つから「稲荷寿司」を連想しました。

 稲荷寿司と言えば、やはり狐への御供え物というイメージが強いでしょう。そこで金山さんの狐っ娘という見た目がマッチしてきます。


 そして、神社と言えばやはり山の上にありますよね。ここはこじつけなので、正直どっちでも良いです。


 最後に、金山さんの得意魔法と言えば“治癒魔法”です。ここで“治”という漢字も完璧にカバーできます。


 なので、「イナリちゃん」と命名すれば金山さんの名残を残すことができる、完璧な状態となる訳ですっ。どうだっ。


 

 ちなみに私の持論を聞いたパパは、頭を抱えてしまいました。

 どうやら、反論の余地を見出すことが出来なかったようです。

 

「……連想力お化けがよォ……」

「ふふんっ。私よりしっくりくる名前を思いついたら、変えても良いですよっ」

「勝てる訳ねェだろうが……」


 やったぁ、勝った。

 ちなみに先に全員に意見してもらったのは、私が先に言っちゃうと誰も意見しなくなっちゃう可能性があったからですっ。


 やっぱり、「俺なにかやっちゃいましたか?」という無自覚な蹂躙よりも、自覚ある蹂躙の方が楽しいですね!


 琴ちゃんは賢いのですっ。どやっ。


 肝心の金山さんも、私の意見に反論する材料を失ってしまったみたいです。


「イナリちゃん……儂、64年も生きてきた冒険者じゃぞ?それをイナリちゃんなど、イナリちゃんなど……ぬぅ」


 ……と、不服そうに尻尾を振り回して唸っていました。

 という訳で、金山さん……いいえ、イナリちゃんには今後ともにお世話になります。


 いや、お世話するのは私達になりそうでしょうか。

 おじいちゃんの介護生活が始まりますね。肝心のイナリちゃんは頬を膨らませて不服そうにしていましたが。



 あ、そうでした。

 最後にイナリちゃんのステータスも見ておきましょう。


「ぬぅ。ステータス・オープン」


 と、いつもの合言葉を唱えてもらってステータスを見せてもらいました。

 麻衣ちゃんも数値を記録しなければいけないので、どちらにせよ大切な話です。

 

 

【金山 米治】

Lv:3

HP:54/54

MP:31/31

物理攻撃:20

物理防御:20

魔法攻撃:21

魔法防御:22

身体加速:65


 

 と言った形でした。

 ステータス的にはバランス型なのですが、“身体加速(すばやさ)”だけが異常に高いですね。小柄という体格も相まって、かなり有能な戦力に育ちそうです。


 レベルアップ研修も近いので、ちょうど良いと言えば良いんですよね。

 呪い三人衆共々、しっかり研修中にレベル上げを行いたいと思います。

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