第四章 揺れる心、重なる音
【第四章 揺れる心、重なる音】ーーーーーーーーー
文化祭が終わっても、胸の鼓動は落ち着かなかった。
真司からの手紙は、机の引き出しの奥にしまったまま。それでも、文字の一つひとつが頭から離れない。
――ずっと、亮が好きだ。
その言葉を思い出すたび、息が詰まりそうになる。
月曜の放課後、真司はまた音楽室にいた。
窓の外は、文化祭の喧騒が嘘のように静まり返っている。
「……来てくれたんだ」
真司の声は少し照れていて、でも嬉しそうだった。
亮はピアノの横に座り、しばらく無言で指の動きを見つめた。
「……あの手紙のこと、答え、聞かせてほしい」
真司の声が低くなる。
亮は視線を落とし、指先を膝の上でぎゅっと握った。
「……最初は、びっくりした。正直、どうしていいか分からなかった」
「うん」
「でも……文化祭で、お前の曲聴いて、気づいた。俺……お前のこと、好きなんだと思う」
言葉が落ちた瞬間、真司はゆっくり鍵盤から手を離し、亮の方を向いた。
「……それ、本気で言ってる?」
「本気だ」
気づけば、真司の手が亮の手を包んでいた。あたたかくて、指先がじんと痺れる。
「じゃあ……これからも、ここで一緒に曲を作ってくれる?」
「……ああ。ずっと」
真司が再び鍵盤を叩く。二人で何度も練習した旋律が、今は柔らかく、確かな響きを持って広がっていく。
それはもう、ただの放課後の音色ではなかった。二人の気持ちを重ねた、新しい始まりの音だった。
窓の外、暮れゆく空に一番星が瞬き始めていた。
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