表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

第三章 ステージの告白

【第三章 ステージの告白】ーーーーーーーーーーー


 文化祭当日。校舎は朝から人の波と音であふれていた。


 亮は照明係としてステージ裏を行き来し、汗をぬぐう暇もない。体育館の中は熱気でむっとしている。


 午後のプログラム、軽音部と有志によるミニライブが始まる直前、真司が舞台袖に現れた。


「お、準備万端?」


「おう。……お前こそ、緊張してないのか?」


「してるよ。めちゃくちゃ」


 そう言いながら、真司は胸ポケットから小さく折りたたんだ紙を取り出した。楽譜でもメモでもない、白い紙片。


「……これ、ステージ終わったら読んで」


 亮が問いかけるより早く、スタッフに呼ばれ、真司は舞台へ出て行った。



 ライトに照らされる真司の姿は、放課後の音楽室で見たときよりもずっと大人びて見えた。


 マイクを通して自己紹介をしたあと、真司はピアノに向かう。静かなイントロ――それは亮が何度も聴いた、あの未完成だった曲だ。


 だが今日は、違っていた。旋律が力強く、まるで何かを告げるように響く。



(……俺に、聴かせたいって言ってたやつだ)


 亮は舞台袖で息を潜め、指先が鍵盤を走るたびに胸が締めつけられる。曲の後半、真司はふいに観客席ではなく、袖の方を見た。


 ――目が、合った。


 その瞬間、全ての音が亮だけに向けられているように感じた。


 曲が終わると、体育館は拍手に包まれた。真司は一礼してステージを降り、亮のもとへ戻ってくる。


「どうだった?」


「……すげぇよ。何か……言葉で言えない」


「それでいい」


 そう言って、真司は小さく笑った。


休憩時間、亮はポケットの中の紙を開く。そこには、震えるような文字でこう書かれていた。



 お前がいなきゃ、この曲は完成しなかった。


 ずっと、亮が好きだ。




 言葉を追ううちに、胸が熱くなった。


 友情じゃない。この感情は――。


 体育館の外に出ると、秋の風が頬を撫でた。遠くでまた音楽が響き始めている。


 亮は、真司を探すように歩き出した。




#BL



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ