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第二十五章 揺れる心、確かめる想い

 ある晩、亮はスマホの通知に目を留めた。


 真司の名前の横に「既読」の文字が並んでいるのに、返事が来ないまま数時間が過ぎていた。


 以前なら、その沈黙は「不安」と「疑念」を常に呼び込んで心に重く暗い影を落としていた。


 胸の奥で小さなざわめきが生まれる。


(……また忙しいのかな。それとも……俺のこと、後回しにしてる?)


 必死に頭を振って浅ましい考えを否定しようとしても、不安は消えなかった。


「会いたい」より先に「嫌われたくない」が出てしまう自分がどうしようもなく悔しかった。



 その夜遅く、やっと真司から着信があった。


「ごめん! 今日リハが長引いて、スマホ触れなかったんだ」


 真司の声は疲れているけど、亮を想いやる必死さが嫌というほど滲んでいた。


 亮は一瞬、心に浮かんだ不安を言葉にしようか迷った。


 けれど、過去の苦しいすれ違いを思い出す。


(……逃げちゃだめだ。俺たちは、もう前みたいに黙って壊れる関係じゃない)


「……正直、不安になった。返事ないと、置いていかれた気がして」


 声は震えていたが、それは本音だった。


 電話の向こうで短い沈黙が流れ、やがて真司の深いため息が聞こえた。


「……ごめん。そんな気持ちにさせたくなかった。俺も本当は、早くお前に『疲れた』って甘えたかったんだ」


 亮は目を見開いた。


 その言葉は、以前なら真司が絶対に見せなかった弱さだった。


 胸の奥が沸々と熱くなり、目には涙が滲む。


「……バカ。そういうの、ちゃんと言えよ。俺は聞きたいんだから」


 真司は戯けたように笑い混じりに答えた。


「じゃあ、これからは素直に甘える。だから、お前も不安なときは言ってほしい」


 電話越しに交わしたその約束は、以前の二人ならできなかったものだった。


 不安も弱さも、隠さずに重ね合わせる。


 それが、二人が成長した証だった。



 夜が更け、通話を切る直前。


 亮は小さな声で囁いた。


「……好きだよ」


 真司は少し照れた声で答える。


「俺も。ずっと」


 画面に映らなくても、心が確かに繋がっていることを強く感じられた。


 ――揺れる心の先に、二人の絆はより強く結ばれていった。


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