第9話
初日は偽名を作ったり、機体の申請をしていたらあっと言う間に終わってしまった。機体はどうやらJ-11を貸してくれるようだ。東側の機体を間近で見るのは初めてなのでとても興味深い。フィクションでも良く悪役として登場するけれど、機体のフォルムはとても格好良くて好みだ。機体の性能をしっかりチェックしておかないと。これからみんなを裏切って敵になるというのに少しワクワクしている自分がいる。
1日目の夜
それはそうと胡玥はやたら距離が近いのが気になる。
一日のやることが終わり、彼女の部屋に連れてこられた。彼女は士官だけあって、専用の個室が宛がわれていた。手続きの間もずっと私のことを触っていたし、やけにボディタッチが多い。何かを隠していると疑われている...…? でもさっきまで全裸だったし。
「私はシャワーを浴びたいんだけど、使ってもいい?」
「なら玥も入るね」
「それは監視の一環なの?」
「それもあるけど単純に女の子が好きだからね」
げ、こいつもなのか。真希といい、彼女といいどうして私の周りは女好きばかり集まるのか……。
その日はシャワーで全身をくまなく触られた。手つきが嫌らしかった気がしたが、武器を隠し持っていないか確かめていると言っていたのでそう思うことにする。
なら最初裸に剥かれていたのは何だったんだ。
「もう寝るよ。凛桜はこっちに来て」
「ベッドは1つしか無いんだね」
「元々一人部屋だし、監視対象をしっかり捕まえておかないとね」
夜同じベッドに入りながら色々話をした。
「凛桜のこと色々聞かせてよ」
寝床に入って早々玥が後ろから抱きしめながら囁いてきた。
「……敵に教えることなんてないわよ」
「ふーん、そういう態度だとこっちも色々考えちゃうなー」
確かにそうだ。捕虜の身だし相手の情報もできるだけ引き出さないと。
ここは親密になっておくべきだ。
「私も言うけど、その代わり貴女のことも教えてよ」
「乗り気になってきた? あと玥のことは玥って呼ぶと良いよ」
「というかなんで抱きついているのよ! 離れて」
「スキンシップスキンシップー」
私も彼女も日本のアニメが好きでその話で盛り上がった。彼女は独学で日本語を学んだらしい。アユンといい、彼女といい独学で日本語を学んでいる率が高すぎないか。私は多少漢語の心得はあったけれど苦手なので一緒に居る間はお互いに言葉を教え合うことにした。今は彼女と仲良くなっておく方が得策だ。言葉がわかれば相手の情報を探れるし。
なんだかアユンとの日々を思い出すようだ。まあ、逃げるためとは言え、今はそのアユンを裏切って敵国で兵士として戦おうとしているのだけれど。私は地獄行きかしら。
流石に色々あり疲れたのか、私は直ぐに眠ってしまった。