第4話
アユンが兵役に行く直前、アユンがまた日本に来てくれた。もうしばらく会えないからと。
日本でともに過ごした日々は今でも覚えている。そこで私たちは結婚を誓いあった。
「アユン。私アユンのこと愛しているの。兵役が終わったら結婚して。一緒に住もうね」
「凛桜、嬉しいよ。私が必ず凛桜を守る」
「私もアユンについていくよ。ずっと一緒にいようね」
兵役についてからは以前のように毎日は話せなかったけれどそれでもよく連絡をしてくれた。
『毎日の基礎訓練はかなりハードだ。凛桜だったら耐えられないかもね?兵役に行くのが君じゃ無くて良かったよ 』
『基礎訓練が終わって空軍に配属されたよ。昔から空に憧れていたからね。凛桜と一緒に空から美しいこの地球を眺めてみたいな』
『早くパイロットになれたらいいな いつでも凛桜のところに駆けつけられるからね』
『もうすぐ兵役は終わる。凛桜は帰ってきたら何がしたい? 私は君を抱きしめたいよ』
兵役の終わりが見えてきた頃、アユンからの連絡の頻度が下がってきた。もしかして身体を壊したのだろうか。私のメールの返事もないし、もしかしてアユンの身に何かあったのかも。でも、今の私には待つことしかできない。
* ~ *
その日は朝から雨が止まなかった。朝起きて見たニュースを忘れることはないだろう。
『臨時ニュースです。本日未明、亜東共和国が大韓民国へ宣誓、侵攻を開始しました。休戦協定の破棄と見られます。』
『韓国大統領室は非常事態宣言を発令し戦闘状態に入ったと発表しました。』
『田中官房長官は我が国はいかなる戦闘行為も肯定できず極めて遺憾だ。即時停戦を求めるとの発表をしました。』
『合衆国報道官のスミス氏は一方的な侵略を激しく非難する。同盟国の安全を確保するためにあらゆる手段を講じると発表し、即時の支援をすると約束しました」
ニュースを見たとき私は目の前が真っ暗になった。戦争なんてテレビの向こうの話だと思っていてまるで現実味がなかった。
戦争が始まってから、彼女からの連絡はほとんど来なくなった。情報が錯綜しているのか、海外のことだからか、日本にいる私は韓国のことが、アユンがどうなっているか知る手段は限られてしまった。
普段から海外の報道が少ない日本だ。
進路に悩んでいたが、当時の私は防衛大学に入学することに決めたんだった。そうすることで彼女に近づくことができると思ったのだろう。今でもこの選択は間違っていなかったと思う。