その命、1000万で買う!!
「ぬわぁ~~~!!」
少女の悲鳴はいつもいつも
「ミムラさ~~ん!!あたしが楽しみしてた、アイスを食べたでしょーー!」
「え~~!?でも、これあたしが買った奴だよ!!」
「2個買って、2個も自分で食べるんですか!!無駄遣いしておいて!!」
プンスカプンスカ怒りながら……。
この人にだけはど~してか、……楽しみにしていた物を奪われる。
「って、感じなんですよ。ミムラさん!!」
「のんちゃんを持ってして、ミムラちゃんを止められないか。君達の生活は上手くいってるね」
「アシズムさん!!あたしより大人なミムラさんがどーして、子供っぽいことをしてるんですか!?ご飯作ってるの、掃除してるの、全部のんちゃんがやってるんですよ!!アイスくらいくださいってんですよ!!」
「はははは、だってミムラちゃんの家事能力はお世辞にも良いとは言えないし。分け与える事なんてあんまり考えないだろうしね」
いつもの仲間達が集まるとある喫茶店で、一緒に住むことになってしまった、阿部のんちゃんは同居人の沖ミムラに振り回されている現状を愚痴っていた。よくできている小学生だ。
「こんな話をどうかな?」
「趣味の人間観察の話ですか?」
◇ ◇
ザザ~~ッ
断崖絶壁。飛び降りれば助からないところと言えば、分かりやすい。
ここで今日。
「「俺は死ぬ」」
……………
「「おい!!どうして、他の人がいるんだ!!」」
2人の面識がない男達。もとい、自殺志願者がやってきた。
「………………」
と、飛び降りづれぇぇ~~。なんでこの人、自殺しに来たの?
「………………」
他にも自殺する場所あんだろ!!ここじゃなくたっていいじゃん。
「あ、あの……自殺ですか?(何聞いてんだ?)」
「え、ええ。今日、天気が良いから死のうかと(何答えてんだ?)」
自殺するくらいの理由はある生き辛い世の中。
「借金があってさ……」
「俺もです。仕事も全然……」
じ、自殺しに来たのに。なんか相手にはさせづれぇな。
そんな2人の男に茶々を入れに来たのか、神様というのは現れる。断崖絶壁のその先。宙で白く光り輝く存在が降臨した。
『お二人共。命を軽んじてはいけません。踏み止まりなさい』
「な、なんだこいつは!?おい、見えるか!」
「あ、ああ!?これは、神様かなにか!!」
『その命をもっと大切になさい』
自分達とは大きくかけ離れた存在が、己の命を大切にするよう説かれてもだ。
「うるせーー!お前に何が分かる!!」
「借金の辛さが分からない神様に、俺達の気持ちが分かるか!!」
『……借金。ようするに、お金ですね。……私は神様です。では今から、1000万を渡しますのでお互いの借金を返済し、生きなさい』
そういうと神様はこの場でなんと、1000万という大金を2人の前に出してみせた。それは紛れもなく本物の札束である。
「「おおおぉっ!!?」」
死にたいと思っていたところに、そんな大金が転がり込んで来た。この命を踏み止まるだけで、1000万が手に入る!!
「「ありがとう!神様!!」」
◇ ◇
ペラッ
「ああっ、この事件ですね。2人の男性が海に落ちて亡くなった事件。アシズムさんが茶々入れたんですか?」
「私としてはお互いに助け合うべきと説こうとしたんだけど」
のんちゃんはスマホでそのお話に関わりある事件を見つけ、そこに関与しているアシズムがその後どーいうことが起きたのか。
子供でも分かってしまうこと。
「アシズムさんがケチなだけですよ」
「ええ~。私のせい?」
「男二人がその場で1000万を独り占めするために戦って、運悪く二人共落ちたんでしょ?だったら、2000万を用意するべきですよ」
「そんな返しをされたら、キリがないじゃないか。……まぁ、のんちゃんとミムラちゃんのやり取りなんて、命が懸かった人達にとっては微笑ましい事だよ」
食べられちゃったアイスに代わって、ショートケーキを出してあげるのであった。