第6話
「はあ⋯はあ⋯」
「⋯」
騎士アリウスとの戦い⋯いや戦いですらないものはすぐに終わった。
戦いと言えないほどに防戦一方であり、騎士アリウスが手加減してくれていたため少しの間は打ち合いが続いた。
そして俺がスタミナが無くなり対応しきれなくなってすぐに騎士アリウスが剣を収めた。
格上の雰囲気が漂っていた女性が召喚したことから油断をしたつもりは無かったが俺の想定を騎士アリウスの実力は大きく上回っていた。
ここに来てから実質ステータスは無くても狼の群れやゴーレムと戦えていたことで調子に乗っていたのだろう。
格上相手に正面からぶつかったことで少しはあった自信が砕け散った。
まあ、それは慢心に近いものだったからここで無くせて良かった。
それに格上と戦うことで色々と収穫はあった。
例えば今持ってる武器の耐久度だったり騎士アリウスの動きだったり魔力の動かし方だったり⋯。
考えたいことは色々あるがまずは近づいてくる女性の話を聞こう。
できるならあと何度か騎士アリウスと戦いたいが⋯。
それも女性がこの戦防戦一方の戦いで満足してくれないことには始まらない。
女性が口を開く。
「そういえば名前を聞いてなかったな。夢人、名は?」
女性が話したのは先程の戦いのことではなかった。
俺が名乗ろうとする。
その寸前、女性が先程喋っていた内容を思い出した。
確か真名がなんちゃらとか言ってたな。
つまり⋯。
「エトだ」
これが正解だ⋯!多分!
「ふふ。合格だ」
!
合格ってことは女性に認められたということか?
満足したってことか?
出来れば騎士アリウスとまた戦いたいが女性はどう思ってるだろうか。
「アリウス。どう思う?」
「⋯」
女性は騎士アリウスに何かを聞いた。
主語は無いが俺に関することなのだろう。
女性は騎士アリウスに向かって何度か頷くと俺に声をかけた。
「アリウスも夢人エトへの評価は高いようだ。森の出入りを許可しよう」
「よし!」
さっきまでの目標が達成できた。
これで取り敢えずハードルを一つ越えた。
このまま何も言及がなかったら俺から騎士アリウスとの訓練をお願いしよう。
更に女性が口を開く。
「それでだが⋯。私の弟子にならないか?」
「え?」
突然のことで驚く。
格上の女性だが俺が見た感じ近接戦闘をするように見えない。
今のところ俺は近接戦闘しかやってないからこの女性から弟子に誘われるとは思わなかった。
いやでも騎士アリウスと戦いたいなら弟子になるのもアリか?
そう考えていると女性が更に口を開く。
「弟子になるなら私の魔の真髄を教える事になる。それに私の元には様々な配下がいる。夢人エトの能力を磨くのに都合がいいだろう」
「騎士アリウスとも戦えるってことか?」
「ああ。アリウスとも戦い腕を磨くといい」
「どうして俺を弟子に?」
「そうだな⋯。簡単に言えば面白そうだからだ」
「なるほど」
俺も面白そうだからこのゲームをやってるし納得できるな。
弟子になった所で今の俺には不都合はないし、あったとしても面白そうだ。
まあ、弟子になろうか。
「⋯これからよろしくお願いします。師匠」
「ああ、よろしく。弟子エト」
そうして俺と師匠は師弟になった。
《シークレットクエスト︰星振翳すとき①をクリアしました》
《クエストを始めてクリアしたことによりスキルと職業が解放されます》
《【探索】を習得しました》
《【索敵】を習得しました》
《【警戒】を習得しました》
《【夜目】を習得しました》
《【歩法】を習得しました》
《【誘引】を習得しました》
《【反撃】を習得しました》
《【急所突き】を習得しました》
《【ノックバック】を習得しました》
《【投げ】を習得しました》
《【スタン付与】を習得しました》
《【無拍子】を習得しました》
《【不意打ち】を習得しました》
《【棒術】を習得しました》
《【気絶付与】を習得しました》
《【精密動作】を習得しました》
《【奇襲】を習得しました》
《【恐怖付与】を習得しました》
《【急所刺し】を習得しました》
《【衝撃通し】を習得しました》
《【急所斬り】を習得しました》
《【急所攻撃】系スキルを3つ確認。【急所攻撃】を習得しました。》
《【精神耐性】を習得しました》
《【森林歩き】を習得しました》
《【採取】を習得しました》
《【伐採】を習得しました》
《【看破】を習得しました》
《【走法】を習得しました》
《【変幻武装】を習得しました》
《【集中】を習得しました》
《【両手持ち】を習得しました》
《【強打】を習得しました》
《【回避】を習得しました》
《【安定】を習得しました》
《【反復】を習得しました》
《【部位破壊】を習得しました》
《【解体】を習得しました》
《【自動回復】を習得しました》
《【体力強化】を習得しました》
《【力強化】を習得しました》
《【敏捷強化】を習得しました》
《【器用強化】を習得しました》
《【槌術】を習得しました》
《【精神耐性】が【精神安定】に変化しました》
《【無心】を習得しました》
《【魅了耐性】を習得しました》
《【威圧耐性】を習得しました》
《【気配察知】を習得しました》
《【交渉】を習得しました》
《【話術】を習得しました》
《【防剣術】を習得しました》
《【受け流し】を習得しました》
《【防御】を習得しました》
《【技量大強化】を習得しました》
《【騎士剣術 初歩】を習得しました》
《【魔力流し】を習得しました》
《【魔力感知】を習得しました》
《【魔力強化】を取得しました》
《【魔力操作】系スキルを3つ確認。【魔力操作】を取得しました》
《【戦闘学習】を取得しました》
《初心者武器の素がスキルと職業が解放されたことで失われました》
《謎の宝石が光り輝いています》
《インベントリから謎の宝石を取り出してください》
うるさ!
連続で通知が来すぎてうるさいな。
だがスキルの通知は聞きたいからまたうるさくなったら通知を切るか考えよう。
そして俺が考え込んでいると師匠が話しだした。
「ふむ。夢人のスキル付与は世界に馴染むとされると聞くが今がその時だったか」
師匠は俺を観察している。
師匠がいるし一旦スキルについては後回しにしよう。
そう考え師匠に向けて質問する。
「世界に馴染むですか?」
「ああ、夢人はこの世界に来た時はスキルを持たず、世界に馴染み安定するとスキルを得て存在が固定される。スキルはこの世界固有のものらしく存在が安定しない状態の夢人では持つことができないようだ。そしてこの世界でスキルを持たない者はこの世界に来たばかりの夢人しかいない。⋯そうだな。これをやろう」
師匠は手を振って本を出す。
それを俺に投げ渡した。
俺は本の表紙を見る。
するとそこには『夢人について』と書いてあった。
「この本は?」
「その本は夢人について色々と書かれている本だ。それを暇なときに読んでおくといい。他の奴らと交流するときの対応の仕方も分かる」
「わかりました」
俺が本を観察していると師匠が指を鳴らす。
すると俺の視界が歪んだかと思うと手入れされているどこかの家の庭にでた。
「!」
「ここは私の家だ」
「師匠の家?」
「ああ。私の弟子は様々なことを学ぶ。それには拠点がいる。まずは私の家を拠点にして過ごすといい」
「わかりました」
「それに⋯」
「?」
「いや、なんでもない」
「はい。わかりました」
そうして俺は師匠の家を拠点とすることになった。