第5話
アリアと名乗った人物は俺には言葉にできない程の絶世の美女だった。
銀の髪に銀の瞳、メリハリのついた体。
俺は見惚れていた。
簡単には言い表せない程の美貌。
これほどの人物がゲームを超えた美貌が視界に写っている。
俺が黙っているからかアリアと名乗った人物は喋り続ける。
「あのゴーレムとの戦いを見ていたよ。手慰みとはいえ私の作ったゴーレムが無職のスキル無しに負けるとは思っていなかったよ。ここに居るってことは君は夢人だね?夢人が現れると聞いて帝都に先程まで居たんだが、真名すら隠さない上にどいつもこいつも素人ばかりで私の興味が惹かれる夢人はいなかった。不死身とは言っても夢人の世界には居ないだけでこの世界には不死身なんて沢山いるし成長速度が速いのもこの世界には稀にそういった天才や怪物などが生まれてくる。今回の夢人は期待出来そうにないと思ったら君を見つけた。帰ってきたら変な反応が森の中にあると思って確認しに来てよかったよ。ここの結界すら素通りして夢人が現れるのは驚いたがそのお陰で君を見つけられたし神もなかなかいいことをするじゃないか」
俺はアリアという人物の話を集中して聞けないでいた。
それほどまでに俺にとっての理想の美女だった。
⋯よく考えたらこのゲームにこの感情は邪魔だな?
どれほどの美貌でもリアルではない以上、俺には関係ない。
取り敢えずそういった欲はこのゲームでは切り離そう。
眼福な美女だなー。
さて落ち着いた。
このアリアという人物が言っていたことを改めて考える。
取り敢えず聞き逃がせなかったことは夢人、森の結界だな。
そこから話を始めて色々聞き出したい所だが⋯
出口を知っていそうだしこの反応からしてこの森はこの人の縄張りに近い何かっぽいな。
一旦、夢人について聞いて、この森の結界についても聞いたら反応によって出口を聞こう。
「あー、流石に無理⋯「ちょっといいですか?」ん?」
ゴーレムを手慰みに作ったと言っていたし俺のスキルと職業が無しなのも見抜いたこの人物は格上。
それに威圧感だけでも今の俺ではどうにもできないことがわかる。
流石に下手に出たほうがいいだろう。
敬語を使って礼儀正しくだ。
どこに逆鱗が埋まってるのかわからないし慎重にしなければいけない。
話を遮るのは格上にやるにはリスキーだがここで遮らないとどんどん話が進んでいきそうだから仕方ない。
そのまま質問する。
「夢人って何でしょうか?」
「⋯ふむ。なるほど。⋯ああ、夢人ってのは夢をみている間にこちらの世界に旅立ってきているやつらのことだ。夢人は基本的に夢を介してこちらに来ているため不死身で自分の本体に被害がいかない。故に犯罪なども簡単に起こす。だが様々な危険があるこちらの世界にとっては短時間で強くなって簡単に操れる夢人はいい資源となる」
夢人は資源扱いか⋯。
まあ、聞いた感じ迫害されないだけまだましな生態してるしな夢人。
次はこの森にある結界ついてか。
「結界とは?」
「やはり来たばかりのようだな。ここの結界について知らないとは⋯。ここの結界はこの森、『魔瘴の森』の出入りを封じる結界だ。出入りの禁止以外にも色々とあるがお前に関係ありそうなのはそれぐらいだろう。あと喋りにくそうだな。敬意を持ってれば多少言葉を崩しても構わん」
結界についての情報とともに敬語をしなくてもいいという許可が出た。
こういうタイプは自分が言ったことに従わないほうががキレるタイプだ。
だからと言ってすぐに敬語を崩すのもだめ。
少し間を置いて敬語を崩して話す。
「⋯わかった。じゃあ、この森を出て結界を通る方法を聞きたい」
出る方法はこの人がここにいる時点でなんとなくは分かっているが一応聞いておく。
考えることもなくこの女性はすぐに答えを教えてくれた。
「ここの結界を通るには私の許可がいる」
⋯やはりか。
なら次に聞くことは決まっているな。
「どうすれば貴女から許可が貰える?」
女性は口角を上げる。
「わかっているだろう?私を満足させてみろ」
そう言うと女性は魔法陣を作り出す。
すると魔法陣から騎士姿の人物が現れた。
「名はアリウス。此奴と戦い価値を示せ」
その騎士姿の人物は女性に礼をすると俺に剣を向けた。
俺はため息をつきたくなるのを堪えて武器を騎士アリウスと同じ長剣に変えた。
「わかった。ではよろしく頼む」
俺がそう返事をすると騎士アリウスは俺に斬りかかってきた。
***
私はアリウスと夢人の戦いが始まると戦いの邪魔にならないように場所を移動した。
私は戦いを観察しながら面白そうな夢人について考える。
いくつか夢人について考えたいことがある。
先程も言ったようにいくら手慰みで作ったとはいえ夢人が壊したゴーレムは無職のスキル無しが壊せるような作りをしていない。
ゴーレムとの戦いを見始めたのが途中からだが明らかにおかしい点があった。
それはゴーレムが何度も夢人を見失っていたことだ。
ゴーレムには視界はない。
しかしそれを補う感知機能をつけている。
それは少し動いたぐらいで見失うような性能はしていない。
それを欺く程の技術をスキルもなしに持っているということになる。
まあ、それはまだいい。
今までの夢人にはもっと凶悪な能力を持ってる者もいたからな。
だが重要なのはゴーレムに対して攻撃するときの姿勢制御と力のコントロール、そして武器変化での対応力だ。
どれもスキルを持ってると出来なくなる類のものでそれ専用のスキルぐらいでしか出来ないことをゴーレムとの戦闘中にやっていた。
アリウスとの戦いを見た感じ武術に関していえば不足もいい所で魔力関係は全くできていない。
その上、身体能力もレベル無しなのだからただの技術で倒したとしても噛み合っただけの可能性もあった。
だがアリウス相手に粘ってる所を見ると受け身の対応力がいいタイプか。
そういう奴らはたまに出るが対応力が超えて死ぬか、その力に過信して死ぬかであまり育ったのを見たことがない。
ならちょうどいいかもしれんな。
最悪の場合は夢人の能力があるとは言え、あれはデメリットが強い。
もし死なずの対応力を身につけた場合、新しい王になれるかもしれんな。
うむ⋯悩む。
悩むなぁ。
育ててもいいし放っておいても面白い。
ちょっかいをかけてもいいし様子を見るのもいい。
⋯だがまあ、今関わったことで育てるに傾いてる。
私を拒否するならそれもまた良し。
何より真名を隠すのがとてもいい。
今ならアヤツの話を理解できるというものよ。
ふふ。
そうだな⋯。
うん。
もし弟子になったら名を与えてやろう。
それぐらいは期待したいものだ。
だがしかし。
うーむ。
良い名はあるか?
《翡翠》、《流会》、《蘇芳》、《阿連宜》もよいな。
なんだったら《蓋星》でもよい。
ああ、楽しみになってきた。
さて、アリウスとの戦いも終わったことだし誘ってみよう。
願わくば我が身に星の輝きを。
星辰の並ぶときそなたが隣にいることを。
それが星の定めであることを願う。