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お叱り

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 その後。お母さんはスーパーの特売日だからと、何とも家庭的な理由で早めに部室から去って行ってしまった。

して、残された私たちはと言えば。


「さてさて、後片付けも終わりまこっちゃんも帰った。では、先ほどの言葉についてご説明願おうか? りょっくん」

 彼を、問い詰めていた。


「何ですか、悪いことなんか一言も言ってないでしょ」

「あぁ言ってないとも、むしろあっくんを褒めるぐらいなものだったね。……でもさぁ、あれはダメでしょ。あれじゃ、あっくんの恋を本人にバラしてるようなもんじゃん!」

「そうよ。こういうのは分かってても、言わないものなの」

 鈴葉さんも同調する。案の定というか、彼の恋心はバレバレだった。自分では気づいていないだろうが、古木君は相当表情に想いが乗るので分かりやすい。

 それゆえに。


「……別に、日暮さんだって分かってたと思いますけどね。分かってて、今まで気づいていないふりをしていた」

「それは、まぁ」

 歯切れが悪くなる先輩たち。うん。私もそこは同意だ。記憶を見た際に、自分に対する古木君の想いを知っても何も反応を示さなかったのが良い証拠だろう。


「僕はただ後押ししただけですよ。あいつの気持ちに応えるか応えないのか、はっきりさせろって」

 彼は毅然とした態度で淀みなく話す。お母さんが彼を真面目な人と評していたように、白黒をつけなければ気が済まない人間のようだった。

 ……いや、違うか。これは単に――。


 はぁと、鈴葉さんのため息が聞こえた。

「あなたの言い分は分かったわ。十分納得もいく。けれど、私は言いたいのはそこだけじゃない。もし真琴さんが暁人くんの気持ちに応えたとして、あなたはそれでいいの?」

涼夜君の眉間には、嫌な皺が寄っていた。

「……僕のことは、どうだっていいじゃないですか」

 投げやりな回答だった。その言葉に、今度は灯莉さんが反応する。


「りょっくん。君は分かってないねぇ。恋っていうのは戦争だぜ? 誰かに譲るんじゃなく、己が利益のために突っ走りなさいよ。そりゃ、私としてもあっくんには幸せになってもらいたいけどさ、だからって君の気持ちを蔑ろにしたいわけでもない」

 鈴葉さんが後ろでうんうんと力強く頷いていた。彼女らは決して尊敬されている感じには見えなかったが、存外先輩をやれているらしい。


 それはともかく、恋、か。今目の前にいる彼が、先ほど行ってしまった彼女に対して。……うん。やはり、としか言いようがないだろう。やはり、こいつが、この男が――。


「だーら分かった? その自分の気持ちに、遠慮はするな。これは先輩からのアドバイスだ。しっかり受け取りなさいよ?」

「アドバイスって、一回も付き合ったことない人に言われても」

「あー言いやがった、このクソガキ!」

 灯莉さんの至言にふてぶてしい態度を取り続ける朴念仁。荒ぶる彼女を鈴葉さんが宥める。


「花凛さん。あなたも何か言ってあげて」

 いくら言葉を連ねてもうんともすんとも言わないこの目つきの悪い男に、鈴葉さんは呆れたようにこちらを見た。

 返す言葉は、決まっていた。


「とりあえず一発殴りますね」


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