#3 休戦
「えっと....この空気どうしたらいいんですかね....」
僕はビクビクしながら言う。
ことは、30分前に遡る。
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「あー。疲れた。やっぱ真紅の満月が出た時はモンスターが湧きやすくなるかね。」
ファイアがそう言いながら、食卓に座る。
そして、エレキやフォレスト、そして僕が、次々と食卓に座る。
しかし、会話が起こらない。
何故かって? そりゃ、エレキが僕と一緒で不機嫌オーラを出してるからだよ。
そして、ただエレキが出した食事を食べるだけの時間が大体30分も続いた。
そして、今に至る。
「あ、そういえば、ナナシノレイ君は何が好きなの?」
フォレストがこの空気を紛らわさせるために言う。
それに僕は、「ズワイガニ」と静かに答えると、みんなが急に「ん?」という表情になる。
「え?みんなどうしたの?」
急に変わった空気に、僕が怖気づきながら言うと、エレキが静かに答える。
「いや、なんですかズワイガニって。そんなもの多分ないでしょ。
こんな状況で面白くもないジョークを言うとか、本当に空気が読めないですね。」
それを聞いて、僕はハッとする。
そうか、ここは食文化が違うから、ズワイガニもそりゃないか。
よく考えればそうだ。
「あっ....いやあのー今のはなんと言いますか、冗談? ではないんですけど....」
僕は必死に取り繕う。
しかし、エレキの嫌悪感は高まるばかりだ。
そして、エレキが食卓を立ち、キッチンへ向かうと、棚からカニのようなものを取り出して、慣れた手つきでカニのようなものを捌き、刺身にする。
「はい。貴方が言っていたズワイガニというのはよくわかりませんでしたが、一撃の蟹ならあるので、刺身にさせていただきました。
もっとも、貴方のために貴重な一撃の蟹を使うのは、不快でなりませんが。」
僕はエレキが一撃の蟹? を出したことに驚いている。
エレキは、人の話をしっかり聞いている。その証拠に、さっきだって僕のズワイガニの要望も、それに応えるために一撃の蟹の刺身を出してくれたじゃないか。
もしかして、エレキは口ではああ言ってるけど、結構優しい人なんじゃないか?
僕がそう考えながら、ニコニコしていると、エレキが「さっさと食べなさいよ」と、不機嫌そうぶつぶつ言う。
うーん....これは....優しいのか優しくないのかよくわんね!
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そうして、食事を食べ終わると、ファイアが「あ」と声を漏らし、喋り始める。
「そういえば、多分ナナシノレイ君てユリ様からの回し者だよね。」
「なんだ? それ。」
僕が思わず質問で返す。
それに、ファイアが答える
「今のご時世、ここは人口減少がやばいのよ。だから、多分ここの神様と言われているユリ様が多分別の世界から人を呼んできたのかな〜って。
「え?….お前ら神様信じてんの….ていうかアイツが?」
そういうと、フォレストが急に捲し立ててくる。
「ナナシノレイ君!ユリ様は居るよ! それに、ゆり様は素晴らしい方だよ! 何言ってんの! 」
「ええ….」
僕は思わず引いてしまう。
やっぱり、宗教とかは理解できない。
「でもさー実際、なんかズワイガニとか言ってたし、ナナシノレイ君だけなんかズレてるよねー」
ファイアが話を戻す。
それに、フォレストが便乗する。
「たしかにねー。それに、なんかモンスターとかをみた時に明らかに動揺してたし。
ここでは常識なのにね。」
「ええ….」
僕はこの世界の常識に驚く。
ていうか僕、さっきから驚いてばっかりだな。
「まぁ、ナナシノレイ….てかもうレイで良いか。はこれからここの常識を学んでけばいいんじゃない? 」
ファイアがまとめに入る。
それに、フォレストもエレキも同調する。
まぁ、たしかにこれから|ここ《アライト・ヘルの常識を学んでけばいいか。