#2 地獄
僕の別の作品も、ぜひ呼んでくださいね。
「なんできたの....お前。」
僕がファイアに連れられて壁の外へ来ると、エレキやフォレストと目が合い、エレキに嫌そうな顔をされて言われる。
おそらく、足手まといだと思われている僕がきたからだろう。
そして、その目は獲物を狩る肉食動物のようで、思わず僕は「ヒッ!」と声を上げ、身震いしてしまう。
いじめられていた時の名残か知らないが、強く言われるとめちゃくちゃビビってしまう。
そして、僕の表情を見てさらに不快感が増したのか、エレキの表情から滅茶苦茶にイライラしているのがわかる。
「先に言っておきます。私はフォレスト様のメイド....いや執事....まぁどっちでもいいか。なので、あくまで"仕事"として貴方に"嫌々"自己紹介をしたりしているわけです。
本来、私は貴方のようなウジウジしてて、気弱で、勇気のなさそうで、極めつけにはどこからきたかわからないのにファイア様に拾われ、フォレスト様の世話を焼かせる。
"不愉快"でなりません。
なので、貴方との付き合いも"ビジネス"の話なので、そこの辺勘違いしないでくださいね。
まぁ、フォレスト様やファイア様は優しいので大丈夫でしょうが。」
僕に言葉の矢がグサグサと刺さる。
気を落とす僕に、ファイアが、背中をポンポンと叩き、「大丈夫だって。あいつって誰にでも初対面は基本あんなだし」とフォローを入れてくれる。
やはり持つべきは友ということを僕はいたく実感している。
それに、フォレストが割って入る。
「でも、ファイア。なんでナナシノレイを連れてきたの!?ここって結構危険だよ!」
「ああ、それは―――」
と、ファイアが説明しようとしたところで十匹くらいのでかい、体の真ん中に黄色い丸がある狼がファイアの背に向かって飛び込んで来る。
「「危ない!」」と、フォレストが叫ぶと同時にフォレストが持っていた大剣が振り下ろされ、それは次々と狼を両断していく。
しかし、残った3体の狼がこちらの目前にまで迫ってくる。
しかし、エレキが無言で三匹くらいの狼をナイフで的確に急所をつき、静かに倒していく。
「危なかった〜….」
僕は思わず声を漏らす。
エレキが、倒し終わった後に、手についている血をパンパンと払い、一言。
「油断していると、本当に命が何個あっても足りませんよ?」
と言った後に、エレキが「はぁ、なんでこんな雑魚どもを介護しなきゃいけないんですか。」とぶつぶつ言っているのを、僕は聞き逃さなかった。
「そういえば、エレキはなんでん"ーっ"ん"ー!」
質問をしようとすると、エレキに突然口を塞がれる。
そして、エレキはため息をついて嫌そうにいう。
「夜では、会話する暇なんかないですよ。貴方みたいな雑魚が。そんなこともわからないんですか?真性のバカですね。」
いちいち、言葉のトゲがひどいな。
「そして!」と、エレキが急に怪訝な顔をしながら大声を出す。
「貴方みたいな雑魚が、私の事を「エレキ」と呼ばないでください。それだけで吐き気がします。」
というと、続けて、
「私のことを「エレキ」と呼んでいいのはフォレスト様だけです。今の所。」
そして、僕がエレキ....じゃないじゃない。ピックによって、心に多大なるダメージが入ったところで、エレキの言っていた通り、毒々しい見た目をしているキノコに顔ができたみたいなやつとか、歯に思いっきり血がついていて、お腹あたりに満月のマークがある熊とか、さっきの狼とか、「なんか寄生虫が見えるぐらいデカくなったらこんな感じなんだろうな」みたいな感じの虫とか、全身緑で、ボロボロの服を着ている身長1mくらいのゴブリン?みたいな奴とかが、一気にこちらに向かってくる。
「おいおい….早いって。」
ファイアが思わず声を漏らす。
そして、エレキが静かに
「広範囲爆破」
と唱えると、でかい爆発が起こり、狼とか、虫とか、ゴブリンみたいなやつとかが、一気に消し飛ぶ。しかし、それだけで済むはずもなく、僕たちにまで爆発が当たりそうになった。
フォレストとファイアはどうやったのか知らないが、爆発を武器でいなし、僕は、直感で何か来ると察知し、事前に離れていたので、なんとか爆発に当たらないで済んだ。
「ちょっと!僕たちに当たってたらどうしてたんだよ!それに、そのなんかすごいの使えたら、さっきの時も、もうちょっと安全にいけたでしょ!」
と文句を言うと、エレキがすぐに反論してくる。
「うるさいですね。貴方に当たったところで私にはなんの損もありませんし、生きていたところでなんの得もありません。
なので、貴方がもし爆発に巻き込まれて死んでも大丈夫というように判断しました。
これで満足ですか?
それと、さっきの件はわざわざ魔法を使わずとも倒せましたし、魔力を使うほどの敵でもありませんでした。」
エレキに淡々と言われる。
「でも….」
と僕が反論しようとすると、
「そもそも貴方は何もできない雑魚で、ただ守られるだけの存在の癖に、つべこべ文句言わないでください。
貴方みたいな雑魚は大人しく守られといてください。」
そう言われると、僕は何も言えなくなる。
実際、僕はさっきから守られてばっかで、何もしていない。
文句を言うのは、何かしてからだろう。
僕はその辺に落ちてた木の槍みたいなやつを持ち、狼とか、熊とかと戦う準備をする。
戦う準備が終わると、それを待っていたかのように、一気に色々なやつが攻めてくる。
僕は1m程度の動物や虫もどきを狙い、木の槍で殺していく。
しかし、僕たちだけでは、この一カ所を守るだけでいっぱいいっぱいなようで、虫や動物、ゾンビのようなやつや、ゴブリンみたいなやつ、体長10mくらいある一つ目の巨人など、地球では見たことない奴まで、際限なく湧いて出てくるので、結構厳しそうだ。
僕は心を無にして小動物などを倒していると、突如、倒していたウサギの中に目が赤いやつが出てきて、そいつが俺に飛びかかってくる。
「がっ….」
ウサギの小さな爪が、僕の頰を引っ掻く。
僕の頬から血が垂れてくる。
そうして、赤い目のウサギに手間取っていると、さっきも見た腹に満月のようなものが描かれている熊が目の前に。
「….!!」
やばいと思った時には、既にエレキに担がれていた。
エレキは慣れた手つきで襲いかかってくる色々な動物などを僕を担ぎながら殺し、そのまま僕を安全な場所へ避難させてくれた。
「ピックさん!すみません!」
僕は謝る。
「….まぁ、最初はこんなもんです。これからもめげずに頑張ってください。」
あれ、意外と優しいな。
僕がびっくりしていると、ファイアが後ろからヌルッときて、言う。
「まぁ、ピックは何かに一生懸命頑張ってる奴には優しいから。」
と言われる。
「雑魚はせいぜい頑張ってくださいね。」
前言撤回。やっぱ優しくねぇわ。
にしても、一体エレキは何がしたいんだ?ツンデレか?
そんなことを繰り返していると、ようやく朝日が昇ってきた。
それを見ると、動物やゴブリンたちは、一目散に逃げていき、夜とは打って変わって、村の危機感がなくなる。
「「ふぅー….やっと終わったー!」」
僕とファイアが達成感に包まれながら大声を上げる。
「うるさいですね。早く家に戻りますよ。」
と、エレキが静かに言う。
それに乗じて、フォレストも
「そろそろ家に帰るよー!」
と優しく言う。
そして、エレキとフォレストについていくように、ファイアと僕は家に戻る。